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セルゲイ・ロズニツァ〈群衆〉ドキュメンタリー3選Selections of Documentary by Sergei Loznitsa — Observing A Faces in the Crowd

ソヴィエトの独裁者スターリンの国葬、国民を扇動した粛清裁判――そしてホロコーストの現場。
その時代(とき)、群衆は何を見つめていたか。

1997年、パラジャーノフやタルコフスキーなどロシア映画界の巨匠を輩出した全ロシア映画大学を卒業後、新たな才能として、ソクーロフの製作で知られる名門サンクトペテルブルク・ドキュメンタリー映画スタジオで映画監督としてキャリアをスタートさせる。
1990年代後半から2000年代後半、ロズニツァはロシア郊外の人々の暮らしや、季節の移り変わりなど、何気ない日常を35mmフィルムで撮影したモノクロの短編作品群を発表してきた。ソ連崩壊後、ロズニツァの映画製作は、転換期にあるロシアの古き良き風土を記録することに重きが置かれていた。これらの作品でロズニツァは度々人の「顔」をロシアの心象風景のように撮影してきた。
2010年以降、ロズニツァは二通りの手法でドキュメンタリーを製作してきた。一つは発掘された過去の記録映像を使用するアーカイヴァル映画(ファウンド・フッテージ)である。アーカイヴ・フィルムを断片的に使用するのではなく、時系列に沿いながら、全編を通じて最初から最後まで各リールを長尺のカットで繋ぎ、歴史をそのまま現代に蘇らせる作風は他に類を見ない。そしてもう一つの手法は、各時代の戦争やその表象を考察するオブザベーショナル映画である。これらの作品でロズニツァは度々「群衆」を象徴的に登場させてきた。
『セルゲイ・ロズニツァ"群衆"ドキュメンタリー3選』はロズニツァの近年の作品群に焦点を当てたドキュメンタリー・セレクションである。様々な時代の群衆と人々の顔を見ることで、時代を突き動かしているのが「群衆」であり、その時代の象徴が私たち一人一人の「顔」であることに気がつかせてくれる。過去と現在に同時代性を感じた時、私たちは、"現代(いま)"、どのような顔をしているのか――

監督
:セルゲイ・ロズニツァ

2/12(金)~2/18(木)上映

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『国葬 STATE FUNERAL』 2019年/オランダ・リトアニア/135分

1953年3月5日。スターリンの死がソビエト全土に報じられた。モスクワ郊外で発見されたスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムは、同時代の200名弱のカメラマンが撮影した、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージだった。そのフィルムにはモスクワに安置された指導者の姿、周恩来など各国共産党と東側諸国の指導者の弔問、後の権力闘争の主役となるフルシチョフら政府首脳のスピーチ、そして、ヨーロッパからシベリアまで、国父の死を嘆き悲しむ幾千万人の人の顔が鮮明に記録されていた。67年の時を経て蘇った人類史上最大級の国葬の記録は、独裁者スターリンが生涯をかけて実現した社会主義国家の真の姿を明らかにする。

2/19(金)~2/25(木)上映

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『粛清裁判 THE TRIAL』 2018年/オランダ・ロシア/123分

1930年、モスクワ。8名の有識者が西側諸国と結託しクーデターを企てた疑いで裁判にかけられる。この、いわゆる「産業党裁判」はスターリンによる見せしめ裁判で、90年前に撮影された法廷はソヴィエト最初期の発声映画『13日(「産業党」事件)』となった。だが、これはドキュメンタリーではなく架空の物語である―― 発掘されたアーカイヴ・フィルムには無実の罪を着せられた被告人たちと、彼らを裁く権力側の大胆不敵な共演が記録されていた。捏造された罪と真実の罰。スターリンの台頭に熱狂する群衆の映像が加えられ再構成されたアーカイヴ映画は、権力がいかに人を欺き、群衆を扇動し、独裁政権を誕生させるか描き出す。

2/26(金)~3/4(木)上映

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『アウステルリッツ AUSTERLITZ』 2016年/ドイツ/94分

ベルリン郊外。真夏の陽光を背に吸い寄せられるように群衆が門を潜っていく。“Cool Story Bro”とプリントされたTシャツを着る青年。辺り構わずスマートフォンで記念撮影をする家族。誰かの消し忘れた携帯からはベートーヴェン交響曲第五番「運命」の着信音が鳴り響く。ここは第二次世界大戦中にホロコーストで多くのユダヤ人が虐殺された元強制収容所だ―― 戦後75年、記憶を社会で共有し未来へ繋げる試みはツーリズムと化していた。私たちは自らの過去にどのように触れたらよいのだろうか。ドイツ人小説家・W.G.ゼーバルト著書「アウステルリッツ」より着想を得て製作した、ダーク・ツーリズムのオブザベーショナル映画。