上映中作品

東京フィルメックス ペマツェテン監督 特別追悼特集

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ペマ・ツェテンは1969年12月に生まれ、2023年5月に心臓発作で53年間の生涯を終えた。彼は7本の完成した長編映画(亡くなった時、8作目の『雪豹』はポストプロダクション中だったが、その後無事に完成に至り、2023年8月のヴェネツィア映画祭を皮切りに、東京を含め、各地の映画祭で上映された。また、9作目の長編映画も撮影は終わっていたと言われている)と数本の短編映画を監督すると共に、多様な小説やエッセイを出版し、他の作家たちの作品のためにチベット語と中国語の翻訳を行っていた。もちろん彼はそれぞれの分野で一人というわけではなかったが、彼のようにそれらの活動を組み合わせて行った芸術家は他にはいなかった。特に彼の映画における諸作品は現代のチベット映画を「定義」したといっても過言ではなく、「チベッタン・ニューウェイヴ」と称されることもあるここ十数年のチベット映画文化の勃興において、紛うことなき中心的存在だった。また彼は自身の映画製作を通じて現代チベット映画に多大な貢献をしただけではなく、チベット映画界のもう一人の重要人物として浮上した元撮影監督のソンタルジャを始めとする、多くの新しい才能を育てたことでも知られている。今回のペマ・ツェテン監督追悼上映では、そのような作品として、ドゥッカル・ツェラン監督の『君のための歌』(2020年、ジャ・ジャンクーとの共同制作)、そして彼の息子で新進気鋭の映画監督ジグメ・ティンレーの『一人と四人』(2021年)を共に上映する。


■上映作品

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静かなるマニ石 The Silent Holy Stones

電気がようやく通ったばかりのチベット・アムド地方の山村の冬。寺でも村でも正月を迎える準備で忙しい。親元を離れて寺で修行している10歳の少年僧は先生のもとで勉強に励むいっぽうで、寺では年下の化身ラマの居室にしかないテレビに興味津々。大晦日、迎えに来た父に連れられて3日間の正月休みに実家に帰ると、家に届いて間もないテレビとビデオに大喜び。正月の伝統行事である村芝居の歌舞劇「ティメー・クンデン」もそっちのけで西遊記のビデオに夢中になる。少年僧は西遊記を先生たちに見せたいと思って家族に頼み込み、テレビとビデオデッキを父の引く馬に載せて寺に戻る。

監督:ペマツェテン(Pema Tseden)/ 102min. / 中国 / 2005

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ティメー・クンデンを探して The Search

一台の車がチベット高原をひた走っていく。車に乗っているのは映画監督、カメラマン、ドライバー、そして皆から社長と呼ばれる男。一行は、チベット歌劇『ティメー・クンデン王子の物語』をモチーフにした次回作の役者探しの旅の途上にあった。社長の案内のもと、村々や寺を回る一行の目の前で、歌劇『ティメー・クンデン』の名場面の数々が、それに関わる人々のエピソードが披露されていく。長いドライブのさなか、旅のつれづれにと社長が自らの初恋物語を語り始める。それにじっと聞き入る一人の娘がいた。長年ともに『ティメー・クンデン』の舞台の主役を務めてきたにもかかわらず、去っていった恋人に会うために監督一行の車に乗り込んできたのだ。はたして彼女の恋の行方は? また監督は自らが思い描く主役にめぐりあうことができるのか?

監督:ペマツェテン(Pema Tseden)/ 112min. / 中国 / 2009

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オールド・ドッグ Old Dog

年老いたチベッタン・マスチフを飼う老人とその息子がこの映画の主人公だ。チベッタン・マスチフは中国の富裕層に高く売れるため、息子は父親の老犬を業者に売る。反発した老人はいったん売られた犬を強引に取り戻すが、今度は犬泥棒が老人の犬を盗もうとする。ついに、老人は一つの決意をもって、老犬を連れて草原に向かう......。ペマ・ツェテン の長編第3作『オールド・ドッグ』は、頑固な老人と犬との関係を物語の中心に置きつつ、都市開発が進むチベットの現状を描き出すパワフルな作品だ。これはもちろん題名の通り人間と犬についての映画だが、同時に近代化の流れにあらがおうとするチベット民族の誇りについての映画でもある。本作は香港映画祭でワールド・プレミア上映され、アジア・デジタルコンペティション部門金賞を受賞。また、韓国のシネマ・デジタル・ソウル映画祭では3つの賞を受賞。

第12回東京フィルメックス最優秀作品賞

監督:ペマツェテン(Pema Tseden)/ 88min. / 中国 / 2011

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草原 The Grassland

一人暮らしのツォモばあさんは、村長から生活保護のために借り受けたヤクを放生のため山に放してしまう。しかしそのヤクが盗まれ、問題となる。村長は昨年放生羊を盗んだ隣の草原の若者たちの犯行を疑い、おばあさんを連れて隣の草原の村長に訴えに行く。隣村の村長は若者たちを呼び出し、山神の前で誓いを立てさせるが、若者たちは無実、真犯人は隣村の村長の息子だった。村長は息子に謝罪させようとヤクを引いておばあさんのもとに連れて行く。 北京電影学院の卒業制作として制作され、高く評価された作品。

監督:ペマ・ツェテン(Pema Tseden)/ 22min. / 中国 / 2004 ※『一人と四人』と併映

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タルロ Tharlo

『オールド・ドッグ』で第12回東京フィルメックスグランプリに輝いたペマツェテン監督の最新作。現代文明と伝統文化の相違に引き裂かれてゆくチベットの遊牧民をユーモアとほろ苦さを交えて描く。長回しの撮影と大胆な構図が強烈なインパクトを与える力作である。『オールド・ドッグ』で第12回東京フィルメックスグランプリに輝いたペマツェテン監督の最新作。現代文明と伝統文化の相違に引き裂かれてゆくチベットの遊牧民をユーモアとほろ苦さを交えて描く。長回しの撮影と大胆な構図が強烈なインパクトを与える力作である。

第16回東京フィルメックス最優秀作品賞・学生審査員賞

監督:ペマツェテン(Pema Tseden)/ 123min. / 中国 / 2015

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羊飼いと風船 Balloon

チベットの草原で3人の息子たちと暮らすダルゲとドロルカルの夫婦。幼い子供たちが風船のように膨らませて遊んでいるのは夫婦の寝室にあったコンドームだ。ペマ・ツェテンの『羊飼いと風船』は、一人っ子政策が適用されていた頃のチベットを舞台に、チベット人の文化や生死感と政策との関係を考察した作品である。物語に重要な役割を果たすのが、ドロルカルの妹で尼僧となっているアミだ。夫婦の長男を学校に迎えに行ったアミは、学校で教師を務めているかつてのボーイフレンドと再会する。教師はアミに自分が書いた小説「気球」を渡す。そこに書かれていたのは彼ら二人のラブストーリーだった。ペマ・ツェテン作品の常連であるジンパがソナム・ワンモと夫婦役で出演。撮影監督リュウ・ソンイェの手持ちカメラを多用したカメラワークも素晴らしい。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。

第20回東京フィルメックス・最優秀作品賞

監督:ペマ・ツェテン(Pema Tseden)/ 102min. / 中国 / 2019

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君のためのうた A Song for You

いつの日か歌手として成功することを夢見ている遊牧民の青年ガワン。ある日彼は街で開かれている歌のコンテストに参加し、そこで美しい歌声を持つ女性歌手と出会う。「アルバムを出さなければ、本物の歌手とは認められない」と彼女から助言を受けたガワンは、ふとしたきっかけで、自分が幼少の頃から身に着けていた音楽の女神とされるお守りと彼女が生き写しのように似ていることに気付くが、彼女の素性を聞き出せぬまま別れてしまう。そして彼は自分自身のアルバムを作るため、都会の西寧へと向かうが...。音楽の夢を追いかける青年が、伝統的な価値観と都会生活の狭間で葛藤しながら、様々な出会いや経験を通して成長する様を描く。ペマ・ツェテンとジャ・ジャンクーがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、ロッテルダム国際映画祭や大阪アジアン映画祭で上映された。

監督:ドゥカル・ツェラン(Dukar Tserang)/ 93min. / 中国 / 2020 エグゼクティブ・プロデューサー:ペマツェテン

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一人と四人 One and Four

周囲を雪に覆われた山小屋。そこに一人で暮らすチベット人の管理人は、車が事故に遭っているのを見つける。車には二人の男が乗っており、一人は既に死んでいたが、もう一人は生きていた。自分は警察官だ、と主張する男。だが、近辺には鹿の角を目的とする密猟者が横行しており、管理人はこの男が実は密猟者なのではないか、という疑いが捨てきれない。更に、前の日に管理人の妻からの離婚届を届けにきた同郷のチベット人が引き返してくる。警察官はこの同郷人が密猟者の協力者だと断定する……。チベット映画の雄ペマ・ツェテンの子息ジグメ・ティンレーの監督デビュー作。ペマ・ツェテン監督作品『羊飼いと風船』に主演したジンパが管理人役を演じている。

監督:ジグメ・ティンレー(Jigme Trinley)/ 88min. / 中国 / 2021 ※『草原』と併映

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