国有企業の工場で働くヤオジュンとリーユン夫婦は、中国の地方都市で幸せに暮らしていた。大切なひとり息子シンシンを失うまでは......。乗り越えられない悲しみを抱えたふたりは、住み慣れた故郷を捨て、親しい友と別れ、見知らぬ町へと移り住む。やがて時は流れ――。改革開放後、"一人っ子政策"が進む1980年代、めざましい経済成長を遂げた1990年代、そして2010年代。喜びと悲しみ、出会いと別れを繰り返し、それでも共に手をたずさえて生きていく夫婦の姿を、激動の中国を背景に映し出す。大きく変貌する社会の片隅で、懸命に生きる市井の人びとを優しい眼差しで描き出した、壮大な叙事詩と呼ぶべき傑作が誕生した。