ロベール・ブレッソンが傑作『バルタザールどこへ行く』の直後に手がけた本作は、またも一人の少女の悲運な運命をまざまざと描きだす。原作はカトリックの作家ジョルジュ・ベルナノスの小説。ブレッソンは、これ以上ない厳格なフレーミングと、俳優たちの演技を最小限に抑制することにより、原作にあった冷酷さを忠実に映像化。常に孤独な魂を映し続けてきたブレッソン映画のなかでもとりわけ苛烈な問題作が誕生した。強情で忍耐強い少女ムシェットを演じたのは、この映画のために抜擢されたナディーヌ・ノルティエ。彼女の悲惨さが極まるそのラストシーンは、ベルイマン、タルコフスキー、ジャームッシュら多くの映画監督をも魅了し、映画史に残る名場面として今も語り継がれる。