不慮の事故により突然妻を失った外科医のユハ。彼は、妻を救えなかったという自責の念から、毎日を無気力で死んだように過ごしていた。十数年後、ふと迷い込んだSMクラブ。そこには、ボンデージ衣裳に身を包んだドミナトリクスのモナがいた。客と間違えられたユハは、そこで思いもかけない体験をする。首を締められ酸欠状態の中、目の前に現れた映像は妻の死の直前の姿。この先に妻がいる。僅かながらも生きる糧を見つけたユハは、その日を境に、モナの元に通いはじめる。次第に内に秘めた衝動を抑えられなくなり、少しづつ仕事や私生活にも支障をきたしていく。ユハの求めるプレイは激しさを増し、2人は さらに危険な領域へと踏み込んでいく―。
本作は、2019年カンヌ国際映画祭監督週間で上映。その斬新な ストーリーと卓越した演出力、完成された映像美で多くの観客に衝撃と感動を与えた。監督は、前作『2人だけの世界』(2014年)が、ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭ほか、世界40カ国の映画祭で上映、さらに、フィンランド・アカデミー賞で7部門にノミネートされ、作品賞と監督賞を含む4部門を受賞したユッカベッカ・ヴァルケアバー。本作では、研ぎ澄まされた光や色調の息をのむ映像と、生と死の世界を時間や音で表現する繊細な演出で、美しい愛と再生の物語を見事に描き出す。