歌舞伎役者のように顔を白く塗り、貴族のようなドレスに身を包んだ老婆が、ひっそりと横浜の街角に立っていた。本名も年齢すらも明かさず、戦後50年間、娼婦として生き方を貫いたひとりの女。かつて絶世の美人娼婦として名を馳せた、その気品ある立ち振る舞いは、いつしか横浜の街の風景の一部ともなっていた。"ハマのメリーさん"人々は彼女をそう読んだ。
本作に出演するのは、メリーさんと関係のあった人たちや思い入れのある人たち、そして昔の横浜を知る人たちである。それらの人たちのインタビューや取材により「メリーさん」とは何だったのか、彼女が愛し離れなかった「横浜」とは何だったのかを検証し、浮き彫りにしていった。いわば本作は、あるテーマ(ヨコハマ、メリーさん)についての「現象」を追ったドキュメンタリーである。