草木を愛でながら、長年住み続ける家を守る絹子を演じるのは日本映画界を代表する女優 富司純子。また絹子の娘の忘れ形見である孫娘の渚には、『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀女優賞受賞の沈恩敬(シム・ウンギョン)。さらに絹子のもう一人の娘・陶子を鈴木京香が演じ、三世代の女性の生きざまをたおやかに表現。そこに見えてくるのは世代それぞれの、儚さ、美しさ、内面の強さだろう。そこに張震(チャン・チェン)、田辺誠一、清水紘治ら男優陣の陰影の深い演技が、味わいを添える。
限りある「生」とは?残った「記憶」が我々にもたらすものとは?忙しさの中で見落とされがちなそれらに一筋の光を当てながら、本作は人生のほんの些細な、なんでもないところにこそ真実がひそんでいることを描き出す。