ロンドンから西へ230キロ。ウェールズの農場の中にある伝説の音楽スタジオ「ロックフィールド」。キングズリーとチャールズのウォード兄弟が1963年に農家の一部を改修して設立。ミュージシャンを目指した兄弟だったが挫折し、バンドマンたちにスタジオを貸し出すことに。それが世界初の滞在型音楽スタジオとなった。
1974年にエースがヒット曲「ハウ・ロング」、クイーンが「ボヘミアン・ラプソディ」を含むアルバム「オペラ座の夜」のレコーディングを行った。2018年に公開された大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもこのロックフィールド・スタジオのエピソードが出てきたことは記憶に新しい。モーターヘッドは1975年にこのスタジオで初レコーディングを行い、ロックフィールド・レーベルと契約。
兄弟のどちらが歌うかで喧嘩したというオアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」や「ワンダーウォール」創作にまつわるリアム・ギャラガーの逸話に興奮し、コールドプレイの名曲「イエロー」がロックフィールドで誕生した瞬間をクリス・マーティンが再現するシーンに深い感動を覚える。
数々の傑作が生み出されたロックフィールドはブリティッシュ・ロックの聖地であり世界中のバンドマンたちの憧れのスタジオだ。1997年の最盛期には、イギリス国内ベスト10のうち7つのアルバムがロックフィールドで録音されたという伝説を持つ。『黄金のメロディー マッスル・ショールズ』(13)に触発されたというハンナ・ベリーマン監督が、ロックを愛するすべての人に捧げる音楽愛に溢れた秀作ドキュメンタリー。