日本の福島に住む大学生・まりあは絶望していた。リアルタイムで世界からもたらされる戦乱、貧困、混沌といった現代社会の病理にうちのめされて、もうこの世界で生きる気力がなくなってしまった。大学の授業やレポートで彼女の気を紛らわすことなどできようはずもない。そして、まりあは自宅近くの湖に身を投げて自殺しようとする。その刹那、彼女の意識は台湾の元総統李登輝の意識と同通し、図らずもまりあと李登輝の対話が始まる。李登輝はまりあに彼女が今まで知らなかった日本統治時代の台湾のことや、李登輝自身の少年時代の高度な教育環境について語り始める。まりあは戸惑いながらも、李登輝の言葉に耳を傾け、今まで全く興味のなかった自分の国の素晴らしい一面に想いをめぐらせる。李登輝は日本兵として戦った先の大戦やその後の台湾における白色テロなどの恐怖政治について語りおろす一方、その間、密かに格闘を続けていた哲学的な問題や信仰についてもまりあに赤裸々に語っていくことになる。