デンマークが生んだ最も野心的で、独自の映像言語を持つ映画監督ラース・フォン・トリアー。批評精神に溢れたテーマ、ベルイマンからカール・ドライヤーなど映画史に名を残す映画人たちの作品や文学からのリファレンス、ホラー、メロドラマ、ポルノといったジャンル映画の新構築、実験的な撮影手法、知性と俗物性を絶妙なバランスで配合した挑発的な作風は、毎作ごとに少なからずセンセーションを巻き起こす。その過激な表現を受け付けない人がいる一方で、熱狂的な支持者も多い。かつて、クエンティン・タランティーノは『ドッグヴィル』(2003)を "最高の脚本"として挙げたほか、ポール・トーマス・アンダーソンは「フォン・トリアーの鞄持ちなら喜んでする」と言い、マーティン・スコセッシは『奇跡の海』(1996)を90年代の映画ベスト10に挙げ、ジョニー・デップは「監督にオファーを待っていると伝えてくれ」とデンマークの雑誌インタビューで語ったこともあるほど。近年は、自らの「鬱」体験や、カンヌ映画祭での失言による追放、パーキンソン病の公表など、荒波にもさらされてきた印象も強いが、それでもなおコンスタントに新たな試みに挑んだ作品を撮り続けている。
今回上映されるのは、初期作の『エレメント・オブ・クライム』(1984)から最新作である『キングダム エクソダス〈脱出〉』まで、39年間の軌跡を網羅した14作品。
このうち『エレメント・オブ・クライム』、『エピデミック~伝染病』(1987)、『ヨーロッパ』(1991)、『奇跡の海』(1996)、『イディオッツ』(1998)、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)、『ドッグヴィル』(2003)の7本は4Kデジタル修復版として蘇るほか、これまで日本では映画祭のみでしか上映されなかった『ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦』(2003/ヨルゲン・レスと共同監督)、『ボス・オブ・イット・オール』(2006)の2本は日本劇場初公開となる。また、『ニンフォマニアック Vol. 1&Vol. 2』はその過激さゆえに日本公開当時はカットされた、Vol. 1とVol.2 合わせて計84分にも及ぶ未公開シーンが追加となったディレクターズ・カット完全版が日本初公開だ。
「痛いほどに、美しい」のコピーが示す通り、フォン・トリアーの作品世界を彩ってきたニコール・キッドマンやシャルロット・ゲンズブール、ビョークら歴代作品の女優たちが次々と登場し、その軌跡はもはや圧巻の一言。既存の壁を突き破り、限界を突破する探究心と情熱、今だからこそ見える軌跡がここにあるー。ファンならずとも貴重な大回顧上映の機会となった。
輝かしい受賞歴を誇る一方で、観る者を挑発するような作風で常に物議を醸してきたデンマーク出身の監督。1995年に同郷のトマス・ヴィンターベアらとともに、様々な制約の中で映画を製作する「純潔の誓い」と呼ばれる映画運動”ドグマ95”を発表すると、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ではカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞。近年では、カンヌ映画祭での上映時に激しい暴力シーンのために4人の観客が鑑賞中に気絶したとの逸話が残る『アンチクライスト』、自身のうつ病の経験をもとに制作され絶賛を博した『メランコリア』、4時間にも及ぶ大長編『ニンフォマニアック』など、新作を発表する度に大きな話題を呼んでいる。
通常料金
※各種割引・サービスデー適用可
※各種鑑賞券ご利用可
※特別興行につき、株主優待ご招待券はご利用いただけません。(提示割引はご利用いただけます)
1. エレメント・オブ・クライム【4Kデジタル修復版】
2. エピデミック~伝染病【4Kデジタル修復版】
3. ヨーロッパ【4Kデジタル修復版】
4. 奇跡の海【4Kデジタル修復版】
5. イディオッツ【4Kデジタル修復版】
6. ダンサー・イン・ザ・ダーク【4Kデジタル修復版】
7. ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦【HDリマスター版】 ★日本劇場初公開
8. ドッグヴィル【4Kデジタル修復版】
9. マンダレイ【HDリマスター版】
10. ボス・オブ・イット・オール【HDリマスター版】★日本劇場初公開
11. アンチクライスト
12. メランコリア
13. ニンフォマニアック Vol. 1 【ディレクターズカット完全版】★日本劇場初公開
14. ニンフォマニアック Vol. 2 【ディレクターズカット完全版】★日本劇場初公開
※当館での上映は、2Kでの上映となります。
フィッシャー刑事の捜査哲学は、犯罪者の視点に立って事件を捉え、解決に導くというものだった。しかし、あまりにも犯罪者の心理を分析する能力に優れていたため、犯罪の渦中に引きずり込まれてしまい…。
(1984年/103分/デンマーク)
R15+ 相当 ※15才未満の方はご観賞いただけません
●本編上映前に『ノクターン』を併映。
夜。ある女性が自宅のアパートで、眠れずに知人と電話で話している。朝が来ることを恐れている「光過敏症」の女の手には、
翌朝 6 時 10 分、ブエノスアイレス行きの航空券。彼女は一歩を踏み出すことができるのか。
●本作は『エレメント・オブ・クライム』の本編上映前に併映予定。
(1980年/8分/デンマーク)
ある映画監督と脚本家が、「エピデミック」という新作映画のストーリーの完成に四苦八苦していた。そしてそのうち映画の題材としていた恐ろしい伝染病が彼らの現実世界をも浸食し始めて…。
(1987年/106分/デンマーク)
1945年、第二次世界大戦敗戦直後のドイツ。ドイツ系アメリカ人のレオ・ケスラーは叔父に紹介されて鉄道会社ゼントローバに就職する。ケスラーは中立的な立場からドイツの復興を手伝おうとしていたが…。
(1991年/112分/デンマーク)
PG12 相当 ※12才未満の方は保護者の助言が必要です
1970年代初頭、プロテスタント信仰の厚い無垢な女性ベスは、油田で働くよそ者のヤンと結婚する。遠く離れた油田へ仕事に行ったヤンの帰りが待ちきれず、彼が早く戻ることを神に願うが、その願いは思わぬかたちで叶えられる…。
(1996年/158分/デンマーク)
R15+ 相当 ※15才未満の方はご観賞いただけません
自ら知的障がい者のふりをして、人々の偽善を暴こうとする活動グループ、“イディオッツ”。彼らに偶然出会ったカレンは、それが演技だと分かり最初は怒りを露わにするが、次第に彼らに惹かれ、行動を共にするようになる。
(1998年/114分/デンマーク、スウェーデン、フランスほか)
R18+ 相当 ※18才未満の方はご観賞いただけません
息子ジーンと2人暮らしのセルマは、つつましい暮らしだが、隣人たちの友情に包まれ幸せな日々を送っていた。しかし、セルマは遺伝性の病で視力を失いつつあり、手術を受けない限りジーンも同じ運命をたどることになる…。
(2000年/140分/デンマークほか)
PG12 相当 ※12才未満の方は保護者の助言が必要です
フォン・トリアーは敬愛するデンマークの大監督ヨルゲン・レスに、彼が製作した短編映画「The Perfect Human」のセルフリメイクを5本撮ることを依頼する。それぞれをどんな作品にするか全決定権を持つトリアーは、無理難題をレスに課すが…。
(2003年/90分/デンマーク、スイスほか)
大恐慌時代の廃れた鉱山町ドッグヴィル。偉大な作家となることを夢見ていたトムは、ギャングに追われたグレースを奉仕と引き換えにかくまうことを町の人々に提案する。しかし、住人の態度は次第に身勝手なエゴへと変貌してゆき…。
(2003年/177分/デンマーク、イギリスほか)
R15+ 相当 ※15才未満の方はご観賞いただけません
ドッグヴィルを後にしたグレースは、父親とともにアメリカ深南部の大農園マンダレイを訪れるが、そこには廃止されたはずの奴隷制度が残っていた。グレースは奴隷たちを解放しなくてはならないという使命感に駆られて行動に出るのだが…。
(2005年/138分/デンマーク、イギリスほか)
R18+ 相当 ※18才未満の方はご観賞いただけません
IT企業経営者のラウンは、架空の社長“ボス・オブ・イット・オール”を仕立て上げ、嫌われ役を押し付けて従業員たちに取り入っていた。そんな時、社長と直接交渉することを望む買収希望者が現れ、落ち目の役者にその役を演じさせるが…。
(2006年/99分/デンマーク、スウェーデンほか)
セックスの最中に幼い息子を事故で亡くした夫婦。愛する息子の死をきっかけに心を病んでしまった妻を療養させるため、セラピストの夫は彼女を森の山小屋へと連れて行くが…。
(2009年/108分/デンマーク)
R18+ 相当 ※18才未満の方はご観賞いただけません
豪華な邸宅で盛大な結婚パーティを開くジャスティンは、皆から祝福されながらもどこかでむなしさを感じていた。そんなとき、巨大な惑星が地球に向けて接近、世界滅亡の時が近づくが、彼女の心はなぜか軽やかになっていく…。
(2011年/135分/デンマーク、スウェーデンほか)
ある冬の夕暮れ、年配の独身男セリグマンは、怪我をして倒れていた女性ジョーを自宅に連れて介抱する。回復したジョーは幼い頃から抱いている性への強い関心と、数えきれない男たちと交わってきた数奇な物語を語り始める。
(2013年/147分/デンマーク)
R18+ 相当 ※18才未満の方はご観賞いただけません
怪我し倒れているところを助けてくれたセリグマンに、次々と性体験を重ねた自らの半生を赤裸々に語るジョー。いつしか不感症となった彼女は、快感を取り戻そうと試行錯誤を繰り返すが……
(2013年/177分/デンマーク)
R18+ 相当 ※18才未満の方はご観賞いただけません