ハプスブルク帝国が最後の輝きを放っていた19世紀末、「シシィ」の愛称で親しまれ、ヨーロッパ宮廷一の美貌と歌われたオーストリア皇妃エリザベート。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた彼女は、コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すために思いついたある計画とは――。
日本でも宝塚歌劇団、東宝ミュージカルの大人気演目の主人公として広く親しまれているエリザベートの40歳になった1年間に光を当てた本作は、史実に捉われない大胆かつ斬新な美術と音楽、自由奔放な演出で、そんな伝説的皇妃のイメージを大きく覆し、「若さ」「美しさ」という基準によってのみ存在価値を測られてきた彼女の素顔を浮き彫りにする意欲作である。