東京と北海道を舞台に、出会うはずが無かった二人の男女の物語。
彼女らをとりまく周りの人々は、様々な問題をかかえる者達だった。
障害を抱えた子を持つ夫婦、行き場のない不倫関係を続ける男女、子を愛せなかった母親、弟の苦悩に寄り添えなかった兄。
コロナ禍で葛藤を抱える舞台俳優、性同一性障害に悩む者、そして耳が聞こえない風景写真家。
人は誰かと繋がる事で自分の存在価値を見出そうとするが、そうする事で脆く崩れていく人間模様。
人間の脆さや弱さを、自然の美しさと対を成すように描いたヒューマンドラマ。
自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉。ある日、ふとしたきっかけで1枚の写真に心惹かれた光莉は、その写真を撮った人物に自分のポートレイト写真を撮ってくれないかとメールで依頼する。光莉の元に返ってきた返信は「人物の写真は撮った事がありません。あと僕は、耳が聴こえません。なので、喋ることもできません。うまくコミュニケーションが取れないと思います。それでもよければ・・・」風景写真家である真斗からのメッセージ。真斗は失聴者だった。
光莉と真斗、それぞれを取り巻く人間関係が少しずつ影響を与えあい、そして脆く崩れていく。自然の美しさと対比されるように描かれていく人間模様。『莉』は単独ではほとんど意味を持たない。他と結びつくことで初めて意味を持つ。