ある地方の暴力が蔓延る町。貧困にも喘ぐ18歳の少年ヨンギュと、彼の絶望漂う瞳にかつての自分を重ねた裏社会の男チゴン。傷だらけのふたりが交錯した時、彼らの運命は思わぬ方向へ猛スピードで走り出す―――。社会格差の闇を描き続ける韓国映画界から新たな才能が発掘された。長編デビュー作にしてカンヌ国際映画際へ導いたキム・チャンフン監督が、原題はオランダを意味する、身体的痛みと心の叫びが渾然一体となったデッドエンド(行き止まり)のクライム・ドラマを創出した。
救いようのない現実から義理の妹ハヤンを守り抜くために暴発するヨンギュを漲るエネルギーで体現したのは、映画初主演のホン・サビン。本作の脚本に惚れ込み、チゴン役を熱望したのは、「ヴィンチェンツォ」『ロ・ギワン』等の主演作を誇るソン・ジュンギ。大きく作り上げた体躯になまなましい傷を全身に刻み、虚無感と悲哀を纏った悪の男に成り切った。芯の強いハヤン役には本作で百想芸術大賞の新人演技賞に輝いた、"BIBI"として広く知られる人気シンガーのキム・ヒョンソ。
登場人物それぞれの望みさえ抱けない境遇とは裏腹に、自由を渇望する彼らの心の深淵にまで触れるこの物語は、観る者の胸を締めつけてやまない。