上映作品

君の顔では泣けない

人生を交換したのが、
君でよかった

ある日突然、誰かの体と入れ替わってしまう──数々の名作を世に送り出してきた"入れ替わりもの"。
自分とは全く異なる誰かの人生に、いきなりダイブすることから生まれる笑いと涙。そんなこのジャンルならではの楽しさに、15年間も入れ替わったままというかつてない独自のアイディアが加わり、相手の人生を守るというひたむきな想いと、一方で自分の人生は失っていくという切なさが交錯する、全く新しい作品が完成した。高校1年生の夏、坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちた翌朝、体が入れ替わってしまう。必ず元に戻ると信じ、家族にも秘密にすると決めたふたり。だが、坂平陸としてそつなく生きるまなみとは異なり、陸はうまく水村まなみになりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう自分に戻ることは諦めるべきなのか──迷いを抱えながらも大学に進学し一人暮らしを始め、やがて就職するふたり。しかし、入れ替わったまま15 年が過ぎた30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる──。
外見がまなみで中身が陸を演じるのは、芳根京子。映画賞を総なめした傑作『64 ロクヨン』 (16)で脚光を浴び、『累ーかさねー』 (18)と『散り椿』 (18)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、今年はトレンドを席巻し大きな話題となったドラマ「波うららかに、めおと日和」(CX)に主演すると同時に行定勲演出の話題の舞台「先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~」に出演するなど、無限の魅力を発揮している。外見が陸で中身がまなみを演じるのは、髙橋海人。 King & Prince のメンバーとして絶大なる人気を誇る一方で俳優としても頭角を現し、「だが、情熱はある」で絶賛され第 116 回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞する。若手俳優の中でも傑出した存在感を放つふたりが、その才能と感性、演技力と人間力を注ぎ込み、唯一無二の共闘を成し遂げた。
さらに、陸の親友役にNHK 連続テレビ小説「あんぱん」の中沢元紀、 まなみの結婚相手 には、 「波うららかに、めおと日和」(CX)に続いて芳根との共演 となる 前原滉 、 陸の弟役に「御上先生」の林裕太など今最も期待される若手と、大塚寧々 、 赤堀雅秋、 片岡礼子、 山中崇ら日本のエンターテインメント界を支えるベテラン俳優が出演、スクリーンに瑞々しさと深みを与えた。
原作は直木賞作家の辻村深月に「この作品を推すために選考会に臨もうと強く心に決めた」と絶賛 され、第 12 回小説野性時代新人賞を受賞し、発売前から重版が決定した君嶋彼方の同名小説。監督は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での受賞で注目された新鋭、『決戦は日曜日』の坂下雄一郎。元に戻れるかもしれないチャンスは一日だけ。 15 歳から 30 歳まで、親との別れ、結婚、出産までを体験したこの体に留まるべきか否か、話し合うふたり。この人生は誰のものなのか? 今この時、手放したくない大切なものとは何か? 自分の人生も君の人生も、生きるということは、心が張り裂けそうになるほど愛おしい。自らの人生と重ねて愛さずにはいられない一作が誕生した。

監督・脚本
:坂下雄一郎
出演
:芳根京子 髙橋海人 西川愛莉 武市尚士 中沢元紀 林裕太/石川瑠華 前野朋哉/前原滉 ふせえり 大塚寧々 赤堀雅秋 片岡礼子 山中崇
原作
:君嶋彼方「君の顔では泣けない」(角川文庫/ KADOKAWA 刊)

STORY

2004年、高校 1 年生の夏、坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちてしまった ── 。
2019年7月、現在。北関東の国道沿いに佇む喫茶店「異邦人」で、待ち合わせをする陸とまなみ。 1年ぶりに会ったふたりは、仕事やプライベートなど近況を語り合うが、どこか違和感がある。実は 15年前、プールに落ちた翌朝、陸とまなみの体が入れ替わってしまったのだ。必ず元に戻ると信じたふたりは、家族にも秘密にし、戻った時に困らないように、互いに起きた出来事を報告し続けてきた。だが、 30歳になった今年は、まなみから別の話があった。「もし戻れる方法がわかったって言ったらどうする?」というのだ。チャンスは今日1日と聞かされ、 突然の事態に驚くばかりで心がついていけない陸に、まなみは「今日中でいいからさ、考えてみてよ」と、軽い調子で投げかける。入れ替わったあの日、ふたりはもう一度プールに飛び込んでみたが、戻ることはなかった。仕方なく相手の人生を生き始めたが、両親に大事に育てられた一人っ子のまなみと、両親と弟と狭い団地で暮らす陸は、生い立ちも性格も全く違っていた。最初の頃は、不安のあまり落ち込んでばかりいたふたりだったが、いつもまなみが先に元気を取り戻し、陸を励ましてくれた。
それから徐々にまなみは、“坂平陸””としてそつなく生きるようになっていく。一方、陸はうまく“水村まなみ”になりきれず、戸惑ううちに時が流れていった。もう“自分”に戻ることは諦めるべきなのか──迷いを抱えながらもふたりは、高校を卒業して東京の大学に進学し、一人暮らしを始め、やがて就職する。そんなふたりにとって、最も忘れられないのは、陸の父親との突然の別れと、葬儀の後の初めてのケンカだった。「もうこのまま戻らなくていい」と決裂したふたりだったが、結婚して妊娠した陸の前に大きな危機が立ちはだかった時、助けを求めた 相手は、やはりまなみだった──あの日、あの時、次々と、思い出が蘇るふたり。本当は自分の人生ではないのに、すべてがかけがえのない日々だった。
この体に留まるか、チャンスにかけてみるのか──リミットが近づく中、初めて本音をぶつけあうふたり。果たして彼らが出した答えとは──?