いまからちょうど5年前の2020年3月17日、フランスでは最初の外出制限(ロックダウン)が開始され、段階的解除まで約2か月に及んだ。(日本での最初の緊急事態宣言は4月7日から5月25日の約1ヶ月半。) 本作はアサイヤス監督が弟と子供時代を、そして5年前のロックダウン期間を過ごした実際の家で撮影が敢行された。物語には自伝的要素も多分に含まれており、アサイヤス監督自身が「これまでの作品のなかでも最もパーソナルで親密な映画」と語る。そんな本作の主演は、アサイヤス監督と3回目のタッグを組むヴァンサン・マケーニュ。そして監督の近作では欠かせない女優であるノラ・アムザウィ、初参加に舞台でも活躍するミシャ・レスコーや、伝説のモデル/デザイナーのイネス・ド・ラ・フレサンジュの娘で、Diorのモデルとしても活躍する新星ナイン・ドゥルソが見事なアンサンブルを見せてくれる。
私たちも過ごした5年前の「あの日々」に人生を見つめ直す、圧倒的共感の物語
2020年4月、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が制限された春。 映画監督のポールと音楽ジャーナリストで弟のエティエンヌは、それぞれが本格的な交際を始めたばかりであるモルガン、そしてキャロルとともに、子どもの頃に暮らした郊外の家に閉じこもって生活することになる。 懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚、一緒に住んで初めて知る互いのこと…なにもかもが変わり、すべてが「止まってしまった」時間のなかで、ポールたちは不安を抱えながらもゆっくりと、たしかにそこにある光、愛と人生の新たな側面を発見していく。
急に自炊に凝り出した。またネットで不要なものを買ってしまった。屋外で本を読む気持ちよさを知った。道で友人に会い、うれしくって泣いてしまった。縫い付けられた日々にたしかにあった、忘れてしまいたい時間、覚えておきたい静寂、ふとした優しさに救われる気持ち──
あれから5年。 あのころの私たち、どうだった?そしていまの、これからの人生はどうだろう。
名匠アサイヤス監督が誰しもの心に残る「あの日々」を描き、人生を見つめ直す傑作ロマンス・コメディが、観客を笑いと共感で包み込む。