ヌーヴェルヴァーグの陰でひっそりと花開いた、最も繊細なロマンティシズム。 ギィ・ジルが描くのは、美しい風景と若者たちの恋、そして切なくも抗えぬ別離の物語である。夏の海辺、パリの街角、港町の空気に漂うのは、青春の輝きと失われゆく愛の痛み。その映像は、時代の喧騒を越えてなお、普遍的な詩のように私たちに語りかける。
長編デビュー作『海辺の恋』と、そして第2作『オー・パン・クペ』。 アルジェリア戦争後の時代を背景に、モノクロとカラーの交錯、写真やナレーション、音楽や長回しが溶け合い、愛と喪失の記憶を刻み込む傑作である。遠距離恋愛の残酷さ、流れるように過ぎ去る愛、人生から静かにこぼれ落ちていくものたち───その映像は儚さと甘美さを宿し、消えゆくものの美しさを珠玉の断章のように織り上げていく。
公開から60年。忘却の時を経て、いま、ギィ・ジルの詩的な映像世界が新たな光を浴びる。
その最も美しい初期作2作品をぜひご堪能ください。
“忘れ去られたヌーヴェルヴァーグの名匠”として2000年代以降に再評価が進められてきたギイ・ジル監督が、死を選んだ恋人との記憶とともに生きる女性を描いた長編第2作。現在をモノクロ映像、追想の断片をカラー映像で描き、愛の記憶と不在の痛みを繊細かつメランコリックに映し出す。
「恋人のいる時間」「昼顔」のマーシャ・メリルが主人公ジャンヌを演じ、「海辺の恋」撮影中にギイ・ジル監督と出会い彼の人生と創作においてかけがえのない存在となった俳優パトリック・ジョアネが亡き恋人ジャン役を務めた。
ジャンヌは亡き恋人ジャンを思い返しながら、いまも彼の記憶とともに生きている。ジャンは社会の秩序やブルジョワ的世界を拒み、ビート族の世界にも居場所を見いだせず、自ら死を選んだ。彼の死を知らないジャンヌには、いつまでも彼が寄り添い、亡霊のように存在し続ける。
監督・脚本 ギィ・ジル
出演 マーシャ・メリル、パトリック・ジョアネ、ジャン・ドワ・ベルナール、ピエール・フレデリック・ディティス、リリ・ボンタン