5 / 15 [金] 公開
都市から隔絶された新疆の草原を舞台に、自然との対話と記憶の循環を詩的に描く長編デビュー作『ボタニスト 植物を愛する少年』。自身の故郷の精神的風景をもとに制作された本作は、ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門でグランプリを受賞し、東京、釜山など世界各国の映画祭で高い評価を得た。北京電影学院出身のジン・イーは、アッバス・キアロスタミやテレンス・マリックらに影響を受け、夢と現実の境界を揺らす瞑想的な映画言語を確立。本作では風景そのものが精神的存在として描かれ、撮影監督リー・ヴァノンの長回しと静謐なカメラが、人間と自然の呼吸を可視化する。音楽はキアロスタミやジャファル・パナヒ作品で知られるペイマン・ヤズダニアンが担当し、現実と幻想を柔らかく結びつける。また演技経験のない素人俳優の起用による自然体の演技も高く評価され、主人公アルシン少年役のイェスル・ジャセレは北京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。ビー・ガンやグー・シャオガンなどの作品を手がけるプロデューサーのズオロン・シャンの参加により、ローカルな物語は普遍的な映画体験として昇華され、現代中国映画の新たな潮流を象徴する一本となっている。
新疆北部の草原に暮らすカザフ族の少年アルシンは、植物を観察し記録することで世界と向き合っている。ある日、漢民族の少女メイユーと出会い、彼の静かな日常は少しずつ変化していく。広大な自然を背景に、言葉にならない感情や揺らぐ時間を見つめながら、現実と幻想が交錯する詩的な世界が静かに広がっていく。