2 / 14 [金] 公開
第77回カンヌ国際映画祭で、【審査員特別賞】を受賞した本作への12分間に及ぶスタンディングオベーションには、驚愕と感動、熱いリスペクトなど賞賛のすべてが込められていた。喝采を浴びたイラン人監督モハマド・ラスロフは、自作映画でイラン政府を批判したとして有罪判決を受けていた。まさに命を懸けて、本作を世界に問うために母国を脱し、28日間かけてカンヌにたどり着いたのだ。本作は、22年に実際に起き社会問題となった、ある若い女性の不審死に対する市民による政府抗議運動が苛烈するイランを背景に、家庭内で消えた護身銃をめぐり変貌していくある家族をダイナミックかつスリリングに描きだす。
家族の絆に綻びが生じるとき、物語は全く予測不能な方向へと加速する......。
一瞬も目が離せない167分。
国家公務に従事する一家の主・イマンは20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ夢にまで見た予審判事に昇進。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。
しかしある日、家庭内から銃が消えた。次第に疑いの目は、妻・ナジメ、姉のレズワン、妹・サナの3人に向けられる。誰が?何のために? 捜索が進むにつれ互いの疑心が家庭を支配する。そして家族さえ知らない疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす―――。