近日上映作品

アメリカ黒人映画傑作選

4 / 18 [金] 公開

今まで見過ごされてきた黒人監督による黒人映画の秀作たち

創成期以来、白人中心の映画業界、ハリウッドのなかで、せまい固定観念や侮辱的なステレオタイプへ反発、人権の向上のためにたたかい続けてきたアフリカ系アメリカ人の映画監督たち。スパイク・リーや昨今ではジョーダン・ピール、バリー・ジェンキンスなどの活躍もみられるものの、残念ながら映画史のなかで正当に評価、紹介されることのなかった「黒人映画」は多い。この度、題して「アメリカ黒人映画傑作選」で特集するのは画一的な<黒人映画>のイメージを打ち破るような、市井の人々の営み、女性たちの眼差しや活き活きとした姿をとらえた、注目されるべき驚嘆の才能をもつ監督たちの知られざる三作品だ。

人間ひとりひとりの深く繊細なエモーション、歴史のうねりの中で存在していた女性たちの姿、日々の営みのこまやかな美しさ、愛や人生そのものについて...。
時代を超えて確かな「声」が浮かび上がってくる珠玉の三つの物語。知られざる偉大な黒人監督たちによる、これからの未来に語り継がれることになるであろう傑作との出会いをどうかお楽しみに。

提供
:マーメイドフィルム
配給
:コピアポア・フィルム

【鑑賞料金】

当日一般¥2,000
大学・専門生¥1,500
高校・中学生\1,000
シニア\1,300
※水曜サービスデー・ファーストデー適用可
※TCGメンバーズカード使用可
※無料券・優待券・招待券使用不可

上映ラインナップ


main.jpg

『ここではないどこかで』 Losing Ground

監督・脚本:キャスリーン・コリンズ 出演:セレット・スコット、ビル・ガン
1982 年 / カラー /アメリカ /86 分
©1982 Kathleen Collins, Courtesy of Milestone Films and the Kathleen Collins Estate

大学で哲学を教えるサラは、画家の夫ヴィクターとニューヨークに住んでいる。夏の間、リゾート地で創作活動に専念したいと言い出すヴィクターに対し、論文執筆のため街に残りたいサラだったが渋々付き合うことに。しかしヴィクターは現地の女性にちょっかいを出し、サラは腹いせに教え子から頼まれていた自主映画への出演を決めてしまう。アフリカ系女性監督による最初期の長編映画。正式公開には至らず、製作から6 年後に監督のキャスリーン・コリンズは逝去。2015 年に修復され上映を果たし、映画評論家のリチャード・ブロディが「ニューヨーカー」誌で「この映画が当時広く公開されていたら、映画史に名を刻んでいただろう」と評するなど絶賛された。エリック・ロメールを思わせるような軽妙かつ洗練された語り口で、男女の機微を活き活きと描く。


main.jpg

『小さな心に祝福を』 Bless Their Little Hearts

監督:ビリー・ウッドベリー 出演:ネイト・ハードマン、ケイシー・ムーア
1984 年 /モノクロ / アメリカ / 80 分
©1983 Billy Woodberry, Courtesy of Milestone Films and Billy Woodberry

ロサンゼルスのワッツ地区で暮らす失業者チャーリーは3 人の幼い子を養うため、職探しの毎日。日雇いの仕事にありつければまだマシな方、なかなか金を稼ぐ手立てが見つからない。妻のアンダイスは夫の不甲斐なさに半ば諦め顔、家計のやりくりに苦心しながら家事に忙殺されストレスがたまる一方。そんな中、チャーリーの浮気が発覚、ついにアンダイスの怒りが爆発する。貧困地帯を舞台に、黒人家族の過酷な日常を抑制の効いたモノクロ映像で丹念に追う。監督は〈L.A.リベリオン〉※の中心人物の一人、ビリー・ウッドベリー。脚本と撮影を“最も偉大な黒人監督”と評されるチャールズ・バーネットが手掛けている。
Rotten Tomatoes で100%の支持率を獲得。10 分近く長回しで捉えたキッチンでの夫婦喧嘩は壮絶の一言。


main.jpg

『海から来た娘たち』 Daughters of the Dust

監督・脚本:ジュリー・ダッシュ 出演:コーラ・リー・デイ、バーバラ・O・ジョーンズ
1991 年/カラー/アメリカ/112 分
Images Courtesy of Park Circus/The Cohen Film Collection

1902 年、アメリカ大西洋沖シー諸島のある島。長年住んだ故郷を離れ、北への移住を決めたぺザント一族だったが、長老のナナは亡き夫が眠るこの地に残ると言い張る。それぞれの思惑が交錯する中、いよいよ島を出る時が来た。これから生まれてくる子供のモノローグで綴られる、ガラ族の女系家族の物語。虐げられても失わなかった高貴な魂と誇りを、詩的な映像美で高らかに謳いあげる。黒人女性監督による初めて公開された長編映画で、2016 年にリリースされたビヨンセのアルバム『レモネード』が本作に多大な影響を受けていることから注目が集まり、2022 年にはサイト&サウンド誌「史上最高の映画ベスト100」の60 位に選出されるなど、今も語り継がれる名作。1991 年のサンダンス映画祭で撮影賞を受賞。