1838年。北ドイツの港町に住むフッターは、家を買いたいという謎の人物オルロック伯爵の依頼により、辺境の地・トランシルヴァニアにある彼の城へ赴くことになった。しかし、そこで待ち受けていたのは恐怖の物語の幕開けで…。ドラキュラ映画の原点にして、怪奇映画不朽の名作。また、特殊メイクの出発点ともいえる重要作。オルロック伯爵が船でネズミの大群と共にペストを蔓延させるなど、原作には無いアイディアも織り交ぜた、巨匠ムルナウ監督版のドラキュラ映画となっている。
監督:F・W・ムルナウ
出演:マックス・シュレック グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム
グレタ・シュレーダー
(1922年/ドイツ/95分)
ベルリンの豪華ホテル。雨の中、レインコートを着て老ドアマンが働いていた。レインコートの下には立派な制服。老ドアマンにとって、その制服は誇りであった。立派な髭をたくわえた威風堂々たる外貌に、近隣の住人たちも敬意を払っていた。しかし翌朝、いつものように出勤すると、そこには別のドアマンが。支配人室へ行くと、地下室のトイレ係への配置換えが命令され…。字幕を排した無字幕映画の金字塔的作品。主演のエミール・ヤニングスは当時のドイツを代表する名優で、後に第1回アカデミー賞主演男優賞を受賞。また撮影には『メトロポリス』で知られるカール・フロイントが参加、見事な効果を上げている。
監督:F・W・ムルナウ
出演:エミール・ヤニングス マリー・デルシャフト マックス・ヒラー
(1924年/ドイツ/89分)
老学者ファウストは、黒死病の蔓延に無力な自分に憤る錬金術師。彼は悪魔メフィストを召喚し「一日だけ何の代償も無しに力を試してよい」と契約を結ぶ。ファウストは若さを取り戻して美しい女性を攫うが、若さを手放すのが惜しくなり悪魔と永遠の契約を結ぶが…。文豪ゲーテの『ファウスト』を基に、民間伝承の中で描かれたファウスト伝説も参照して作られたムルナウ監督版のファウスト。絵画的な美しさが追及された撮影は動く絵画のようで、またロマンティシズムにも溢れた重厚な作品。
監督:F・W・ムルナウ
出演:イェスタ・エクマン エミール・ヤニングス カミラ・ホルン
(1926年/ドイツ/107分)
真面目で妻思いだった農夫が、都会の女に誘惑され堕落する。彼は愛人に唆され妻を殺そうとするが、土壇場で思いとどまる。一方、純真な妻は、夫が自分を殺そうとしたことにショックを受け、泣きぬれる。夫は激しい後悔の念に苛まれて改心し、妻も夫を許すが…。巨匠ムルナウ監督の代表作。物語はシンプルながら、ロマンスやラブコメディ、サスペンス…と色々な要素が散りばめられたサイレント映画史に残る傑作の一つ。第1回アカデミー賞芸術作品受賞、主演女優賞、撮影賞受賞。第5回キネマ旬報ベスト・テン外国映画部門第1位。
監督:F・W・ムルナウ
出演:ジョージ・オブライエン ジャネット・ゲイナー
(1927年/アメリカ/108分)