上映作品

未来惑星ザルドス[名画座2本立て]Zardoz

ション・ブアマン監督が幻視した戦慄の未来社会

独創的かつ挑発的ブアマンの最も過小評価されている作品
― シカゴ・リーダー紙( 1985)
ヴィジュアルも鮮烈なブアマンの最高傑作
再評価に値する
― チャンネル4 (2019)

不老不死のユートピアに放たれた撲滅戦士
― 男は反逆者か、解放者か
2293 年、人類は不老不死の社会を実現。特権階級の永遠人(エターナルズ)たちは、外界から隔絶された透明ドーム(ボルテックス)の中で平和で優雅な毎日を過ごしていた。彼らは空飛ぶ巨大神像ザルドスを建立、それを崇める撲滅戦士 (エクスターミネーターズ)たちを操り、荒廃した外界に棲む獣人(ブルータルズ)たちの搾取と殺戮を続けている。だがある日、撲滅戦士のリーダー、ゼッドは、着陸したザルドスの口内に身を隠し、ドーム内に潜入。ザルドス=神の忠実な下僕だったはずのゼッドの目的とは一体?
かのキューブリックも協力した、巨匠ブアマン×初代「007」ショーン・コネリーの先鋭的SF『未来惑星ザルドス』は、前作『脱出』が大ヒットし、アカデミー作品賞、監督賞候補となった英国の巨匠ジョン・ブアマン、自ら製作・脚本も兼任、その驚異的なイマジネーションを余すことなく解き放った結果、人類の恐るべき未来を予見してしまったとてつもないSF巨篇。主演は、初代「007」のショーン・コネリー。弁髪、胸毛に赤ふんどし、半裸で大地を駆けるその雄姿によって、ボンド俳優のイメージを一新した。共演は 『愛の嵐』のシャーロット・ランプリング。性を超越したクールな美貌は、まさにキャリア絶頂の美しさ。
映画化に際し、【生と死】【神と人間】【愛と性】【自然と文明】など、自作『2001 年宇宙の旅』にも通じるテーマに興味を抱いたスタンリー・キューブリック監督は、ノンクレジットでテクニカル・アドバイザーとして協力。『2001年~』 の 名 カ メ ラ マ ン、ジェフリー・アンスワースの抜擢など、さまざまな便宜を図ったという。憤怒の形相で地上に君臨する巨大神ザルドスの強烈造形、合わせ鏡の無限反射、 サイケデリックな投射イメージ、『テネット』でも多用された逆転撮影など、ブアマンとアンスワースが映像表現の原初に立ち返ったトリック撮影も大きな見どころだ。 だが、永遠の生よりも死を讃える先鋭的メッセージを突きつけるこの作品は、初公開時、一部の批評家と観客を除き、まったく理解されなかった。それから約半世紀、今も評価は揺れ続け、世界中で論議が絶えないSF映画史上屈指の問題作として孤高の地位を保っている。 地球温暖化と異常気象、感染症の蔓延、終わりなき戦争、ヘイトと差別、社会を分断する格差、そして政治と宗教が癒着した全体主義―すでにディストピアと化した 21 世紀に生きる我々の眼に、23 世紀のユートピアはどのように映るだろうか。

脚本・製作・監督
:ジョン・ブアマン
出演
:ショーン・コネリー、シャーロット・ランプリング、セーラ・ケステルマン、ジョン・アルダートン、サリー・アン・ニュートン、ナイオール・バギー
撮影
:ジェフリー・アンスワース
美術デザイン
:アンソニー・プラット