上映作品

遠いところ

映画、ではなく現実 -次の世代に残してはいけない問題がここにある-

主人公アオイを演じるのは、昨年『すずめの戸締り』に出演して話題を呼び、本作が映画初主演となる花瀬琴音。東京出身の彼女が、撮影の1ヶ月前から現地で生活し、"沖縄で生まれ育った若者"アオイを体現する。アオイの友人、海音には映画初出演となる石田夢実、夫のマサヤには『衝動』(21)の佐久間祥朗が起用され、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地入り、沖縄・コザで実際に体感した生活感溢れるリアルな演技を披露している。
監督は、長編デビュー作『アイムクレイジー』(19)で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮。長編3作目のオリジナル作品『遠いところ』は、4年に渡り沖縄で取材を重ね脚本を執筆、全編沖縄での撮影を敢行した。日本公開に先立ち、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品、約8分間のスタンディング・オベーションを受けた。さらに第23回東京フィルメックス[コンペティション部門 観客賞受賞]、第44回カイロ国際映画祭 [インターナショナル・パノラマ部門]、第53回インド国際映画祭(ゴア)[シネマ・オブ・ザ・ワールド部門]、ヨハネスブルグ映画祭など、海外映画祭で高く評価されている。

監督・脚本
:工藤将亮
脚本
:工藤将亮、鈴木茉美
出演
:花瀬琴音、石田夢実、佐久間祥朗、長谷川月起、松岡依都美

STORY

沖縄県沖縄市コザ。
17歳のアオイは、近くに住む祖母に幼い息子を預けて、朝までキャバクラで働きながら日々の生活費を稼いでいる。夫のマサヤは、仕事を辞めてから新たな職を探そうともせず、アオイに金銭を無心し、そのことを咎められると暴力を振るうことで己を正当化するのだった。

ある夜、キャバクラで警察のガサ入れが強行される。アオイは水商売の就労年齢に達していない未成年の仲間たちと、店を抜け出し警察から逃れようとするも検挙されてしまう。警察から帰宅したアオイはマサヤが生活費を持ち逃げしたことに気付く。警察の取締りを恐れて未成年を雇ってくれる店は無く、頼れる親もいない。家賃を払えなくなり、仕方なく息子と共にマサヤの母の元へ身を寄せる。

昼の仕事を探すものの、水商売以外の職歴も無く、幼い息子がいる身では、自立して生活できる程の賃金を貰える仕事は見つからない。切羽詰まったアオイに対して、顔見知りのキャバクラの店長が「金を稼ぐ方法はある」と囁く。