上映作品

裸のムラ

どこもかしこも嗚呼、パターナリズム?!
北陸の保守王国にみる、ニッポンの縮図
『はりぼて』の五百旗頭幸男監督がしかける、
笑うに笑えないポリティカル・ドキュメンタリー

舞台は石川県。現職最長となる7期27年目の谷本正憲(たにもとまさのり)知事(75)は、コロナ禍に「無症状の方は石川県にお越しいただければ」と失言、「4 人以下での会食」を呼びかけながら自身は90人以上で会食。永すぎた権力集中が招いた綻びか、仕える者は忖度の度合いを強め、為政者は傍若無人になっていく。そんな長期県政もついに終焉を迎えた。8選出馬に前向きに見えた谷本の機先を制したのは、谷本の選対本部長を務めていた衆議院議員の馳浩(はせひろし)新知事が掲げたスローガンは「新時代」。そういえば22年前、衆議院に初当選した馳が掲げていたのもまた「新時代」だった。ムラの男たちが熱演する栄枯盛衰の権力移譲劇。ここ一番で必ず登場するのは、ご存知キングメーカーの森喜朗(もりよしろう)だ。いっぽうキャメラは、市井の生活者へも向けられる。同調圧力の強い社会で暮らすムスリム一家、車で移動しながら生活や仕事をするバンライファーの家族の姿から、理想や自由をめぐる葛藤と矛盾が浮かび上がる。

監督は、富山市議会の不正を丸裸にした映画『はりぼて』の五百旗頭幸男。富山のチューリップテレビを辞した五百旗頭が、新天地の石川テレビで制作した2本のドキュメンタリー番組「裸のムラ」と「日本国男村」から本作は生まれた。映画は、私たちが暮らす社会に偏在する家父長制パターナリズムの徴を笑いとともに抉り出していくのだが、被写体と厳しく向き合うなかで、しだいに高圧的になっていく取材者自身の姿も晒すことになり...。

監督
:五百旗頭幸男
撮影
:和田光弘
編集
:西田豊和