金色と銅色の枯葉の絨毯に彩られる色彩豊かな季節。静寂がささやく栗の森で語られる哀切の余話『栗の森のものがたり』。ケチで不器用な年老いた棺桶職人マリオと、この地を離れることだけを夢見る若い栗売りマルタ。マリオは家を出た息子ジェルマーノと死にゆく妻ドーラのことを、マルタは第二次世界大戦から戻らない夫のことに思いを馳せている...。それぞれ悲しみに包まれていた見知らぬ二人は、栗の森によって結び付けられる。夢、幻影、幻覚が現実の記憶と混在し、それぞれの物語がマトリョーシカのように別の物語に繋がり、「魂が忘れられた場所」に光を灯してゆく。