上映作品

第24回東京フィルメックス

優れた映画を通じた異文化交流を目指し、アジアの創造性に溢れ、多様性豊かな作り手を応援する第24回東京フィルメックス開催!


■ヒューマントラストシネマ有楽町での開催期間
11/19(日)~11/26(日)

■料金
前売券 (~11/18 19時販売):一般¥1,400-/U-25割¥1,000-
会期中券(11/19 10時~販売):一般¥1,900-/U-25割¥1,300-
 ※平成10年1月1日以降生まれの方を対象としたU-25割チケットがございます。当日会場にて年齢確認をさせていただく場合がありますので、年齢を証明できるものをお持ちください。
 ※障がい者手帳をお持ちの方はU-25割が適用されます。(付き添い1名様まで同料金でご購入いただけます。ご入場の際に、障がい者手帳をチケットと一緒にご提示ください。)
 ※チケットの払戻、交換、再発行はいたしません。また、当日にチケットをお持ちでない方は入場できません。チケット・最新情報詳細は映画祭公式サイトにてご確認ください。
 ※特別興行のため、TCGメンバーズカード、各種割引およびご招待券などはご利用頂けません。
 ※株主優待のご招待券、提示割引ともにご利用いただけません。
 ※東京都では18歳未満の方は23時を過ぎる上映回には保護者同伴であってもご入場頂けません。

■販売期間
・前売券
オンライン:11/4(土)10:00 ~ 11/18(土) 19:00
 ※劇場窓口での販売は劇場オープン時間(※11/4(土)はAM10:00~)からとなります。連日、最終回上映開始と同時に窓口販売は終了となります。ご注意ください。
 ※11/18(土)の東京フィルメックス上映作品の窓口販売は19:00をもって終了とさせていただきます。

・会期中券
オンライン:11/19(日)AM10:00 ~各作品上映開始時刻の20分前まで
 ※劇場窓口での販売は劇場オープン時間(※11/19(日)はAM10:00~)から各作品上映開始時刻までとなります。お時間を過ぎての販売は行えませんのでご注意ください。
 ※窓口販売は連日 最終回上映開始と同時に窓口販売は終了となります。ご注意ください。

20231102034911-61b002940b04b903e90979cbb9e406fa48a49a8b.jpg

『クリティカル・ゾーン』Critical Zone(コンペティション)

イラン、ドイツ / 2023 / 99分
監督:アリ・アフマザデ( Ali AHMADZADEH )

GPSの音声に導かれ、車で夜のテヘランをさまよう一人の男。アミールという名前のドラッグの売人である彼は、夜の暗闇と街の灯りの中、様々な顧客たちに会いに行き、そして彼らを車に招き入れる。介護施設に住む老人たち、海外から戻ってきたばかりの客室乗務員、ストリートに立つトランス・セクシュアルの街娼たち、そして麻薬中毒の息子を何とか救おうとする母親....ベルリン国際映画祭フォーラム部門で紹介された『Atomic Heart』(15)に続くアリ・アフマザデの第3作目の長編である本作は、ドキュメンタリー的な要素と超現実的な筆致を同居させながら、抑圧が続く社会の水面下でくすぶっている人々、とりわけ若い世代の人々の苦悩や欲望を直接的かつ直感的に描き出していく。イラン当局によって監督の海外への渡航が禁止される中、ロカルノ映画祭にて金豹賞(最高賞)を受賞した。

20231102034932-2cd2fbaea8a15b3c67cc2b302c07720a912a3f97.jpg

『タイガー・ストライプス』 Tiger Stripes (コンペティション)


マレーシア、台湾、シンガポール、フランス、ドイツ、オランダ、インドネシア、カタール / 2023 / 95分
監督:アマンダ・ネル・ユー( Amanda Nell EU )

イスラム教の女子学校に通う12歳の少女ザファン。保守的な規範に厳格に従うことを周囲から期待される中、踊りながらスカーフを外し、服を脱ぐ行為を携帯電話で撮影するなど、彼女は友人たちと無邪気に遊びながら、危険な逸脱行為を屈託なく楽しんでもいる。そんな中、彼女は自分の体が他の誰よりも早く変化していることに気付く。友人たちは最初、彼女の違いを一種の特権として認識するものの、徐々にそれは親友のファラーや仲間たちからの排斥といじめに変わっていく。しかしながら、彼女の体の変化はそれだけに留まらず.... 2018年に企画段階で「タレンツ・トーキョー・アワード」を受賞したアマンダ・ネル・ユー監督の長編監督デビュー作。常に社会の視線に晒される女性の体とその変化に伴う思春期の焦燥と不安が、ホラー映画の意匠を用いて象徴的に描かれている。カンヌ映画祭の批評家週間でグランプリを受賞した。

20231102034954-000500bd10d3cf89648c3fe48e4cab215c8b1c11.jpg

『冬眠さえできれば』 If Only I Could Hibernate (コンペティション)


モンゴル、フランス、スイス、カタール / 2023 / 98分
監督:ゾルジャルガル・プレブダシ ( Zoljargal PUREVDASH )

モンゴルの首都ウランバートルの郊外に住む10代の青年Ulzii。数学に天才的な才能を持つ彼は、物理学コンクールで優勝し、良い学校へ進むための奨学金を獲得しようと決意を固める。しかし母が地方で仕事をすることを決め、彼と弟たちを残して家を空けることになったため、彼の計画は変更を余儀なくされる。彼は勉強する代わりに妹や弟の世話をし、厳しい冬を乗り切るために家の暖房を維持するという大変な仕事を強いられることになる…。2017年に企画段階で「タレンツ・トーキョー・アワード」を受賞したゾルジャルガル・プレブダシの長編初監督作品。敢えて言えば社会派リアリズム映画の系譜にある作品だが、陰鬱な社会や悲惨な状況をそのまま映すのではなく、どこかに常に希望や楽観的な視点が入り込んでいるのがこの作品の大きな魅力となっている。カンヌ映画祭公式部門に史上初のモンゴルの長編映画として「ある視点」部門で上映された。

20231102035016-8132033af352baa1822d0197382c71fb2d483887.jpg

『雪雲』 Absence  + 『短編故事』Short Story(コンペティション + 特別招待作品)

中国 / 2023 / 102分
監督:ウー・ラン ( WU Lang )

10年間の刑務所生活を経て海南島に戻ってきたJiangyu。彼の不在中、島では住宅業者による開発が進み、社会は大きな変化を遂げていた。彼は小さな美容室を営むかつての恋人のHongと再会する。そして彼女が養う少女が自分の娘ではないかと考えている彼は、新しい社会に適応し、自分自身を立て直そうとするが...。カンヌ映画祭で上映された同名の短編作品を拡張した、新鋭ウー・ランの長編初監督作品。都市計画の不備により、何百もの建設途中の空き家と、住宅を切実に必要とする多くの人々が存在する当地の状況を背景にした社会意識の高い作品だが、説明的な描写は極力抑えられ、強烈なイメージと巧みな画面構成によってその多くが捉えられている。メロドラマの部分も同様で、主人公たちは基本的に寡黙だが、ちょっとした仕草や表情の変化によって深い感情や微細な感情が表出される演出が素晴らしい。ベルリン映画祭のエンカウンター部門にてプレミア上映された。

<併映上映:『短編故事』Short Story>
中国 / 2023 / 12分
監督:ウー・ラン( WU Lang )

夫は夢を見ている。妻が自分から去っていくのを見て、彼女との関係を修復しようとする。目覚めた時、彼は目の前で起こったことが現実なのか、それとも単なる夢なのかわからなくなる…。『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』のホアン・ジエと『雪雲』でも組んでいるLi Mengを再び主演に迎え、男女の関係の微妙な陰影を描いたムードピースとも言うべき短編作品。ベネチア映画祭オリゾンティ部門でプレミア上映された。

20231102035035-3b190aca50a7fa7c31cb8e76a951d808e31d8e13.jpg

『川辺の過ち』 Only the River Flows(コンペティション)

中国 / 2023 / 101分
監督:ウェイ・シュージュン ( WEI Shujun )

1990年代の中国の田舎町。川辺で老婦人の遺体が発見され、刑事課主任のMa Zheが事件の捜査を指揮することになる。すぐに容疑者は逮捕され、警察の上層部は喜んでこの容疑者を殺人者と認定し、事件を解決済みとする。しかし更に遺体が発見され、犯行現場で目撃された女性も見つかっていない状況を受け、Ma Zheは何かがおかしいと感じ、上司の意向に反して捜査を続けるが…。16㎜フィルムで撮影され、赤茶色や色褪せた青、そして黒を多用した陰影に富む画面設計が印象的なフィルム・ノワール作品。不条理なダーク・コメディの趣もあり、二転三転する事件捜査の進展がウィットに富んだ筆致で描かれている。その一方で、それが最近の好景気以前、そして天安門事件以後の中国への社会批評にもなっているところにウェイ・シュージュンの確かな力量を感じる。今作は彼の3作目の長編作品で、前2作品に続いてカンヌ映画祭にてプレミア上映された。

20231102035049-f79c2540186af980a2745f67b9021bff7c16136a.jpg

『ミマン』 Mimang (コンペティション)

韓国 / 2023 / 92分
監督:キム・テヤン ( KIM Taeyang )

変わりゆくソウルの街を散歩したりドライブしたりしながら、若い画家と映画講師の移り変わる運命と人生の節目を本作は捉えていく。恋愛関係やキャリアの目標、あるいは地元の記念碑について思いを巡らせ、会話を交わしながら、旧友である彼らは横断歩道や路地を肩を並べて歩く。そして彼らが同じ場所や物語、そして同じ会話のポイントを巡って戻ってくる様子が、数年に渡る撮影の中で観察されていく。題名の「ミマン」という韓国語にはいくつかの定義があり、言葉では言い表しにくい概念の一つだと思われるが、本作が扱っているのもまさにそのような言語化しにくい感情であり、日常的でありながら、それでいて普段は忘れているような感情が、ここでは巧みに掬い上げられている。望遠レンズを用いて美しく切り取られた街並みと、街の環境音を含めた音響デザインも秀逸。新鋭キム・テヤン監督の長編デビュー作で、トロント映画祭ディスカバリー部門でプレミア上映された。

Last Shadow of the First Light.jpg

『Last Shadow of the First Light(英題)』(メイド・イン・ジャパン)


シンガポール、日本、スロベニア、フィリピン、インドネシア / 2023 / 108分
監督:ニコール・ミドリ・ウッドフォード ( Nicole Midori WOODFORD )

シンガポールで父と暮らす高校生のアミ。彼女の母は日本人で、東日本大震災の際に日本に帰国したきり、ある時期を境に行方不明になっていた。頻繁に母の夢を見るアミは母がまだ生きていると確信している。彼女の残したテープや手紙を新たに発見したアミは、自分が夢で見た道を辿ることを決意し日本に向かう。そして母の最後の居場所を知る唯一の人物で、現在は東京に住むタクシー運転手の叔父と共に、東北地方へ母の足跡を辿る旅に出るが...。短編作品で注目を集め、エリック・クーが製作を務めたHBOアジアのテレビシリーズ『フォークロア2』の一篇「お出かけ」を監督したニコル・ミドリ・ウッドフォードの長編デビュー作は、喪失の痛みに人々がいかに向き合うかを描いた作品だ。名手浦田秀穂による見事な撮影に加え、幽霊や死者の魂が生者の世界と共存する超自然的な描写も大きな効果を上げている。サンセバスチャン映画祭の新人監督部門でプレミア上映された。

20231102035114-a46da853a784e3f1d9d0a0c1be645deb34196a65.jpg

『お引越し[4Kデジタルリマスター版]』MOVING [4K Digitally Restored Version](メイド・イン・ジャパン)

MOVING [4K Digitally Restored Version] ※当館では2Kでの上映※
日本 / 1993 / 124分
監督:相米慎二( SOMAI Shinji )

京都で暮らす明るく元気な小学年6年生、レンコ。しかし父親が家を出ていき、母ナズナとの二人暮らしが始まる。ナズナは新生活のための規則を作るが、レンコは変わっていこうとする母の気持ちが理解できず...。離婚寸前の両親の間で揺れ動く少女が、自分の中の少女と決別する瞬間を描いた傑作。大人不在の世界で少年や少女があてどもなく彷徨い、その結果成長するという極めて相米的なモチーフが、最も高い完成度で結実した作品でもある。1993年に日本で劇場公開され、カンヌ映画祭「ある視点」部門でも上映。それから30周年に当たる今年、35㎜オリジナル・ネガフィルムから4K解像度によるデジタル修復作業が行われ、8月から9月にかけて開催された第80回ベネチア国際映画祭のクラシック部門(Venice Classics)にてプレミア上映され、最優秀復元映画賞を受賞した。

20231102035126-32de7ea7b739d78e31eceb81fed44b9ed9102276.jpg

『広島を上演する』Performing Hiroshima(メイド・イン・ジャパン)

日本 / 2023 / 133分
監督:三間旭浩(MIMA Akihiro)、山田 咲(YAMADA Saki)、草野なつか(KUSANO Natsuka)、遠藤幹大( ENDO Mikihiro)
配給:一般社団法人マレビト

広島市内のアパートでパートナーと暮らしている女性が友人と川辺で定期的に会い、詩を共作していく姿を描く三間旭浩の「しるしのない窓へ」。原爆投下時に爆心地から約1kmの場所で胎内被曝した女性が、自身として、自身の母として、そしてある人生の語り手としてカメラに向かって語る山田咲の「ヒロエさんと広島を上演する」。大切な存在を失ったばかりの女性が「喪失」と向き合いつつ日常生活を送る様を描く草野なつかの「夢の涯てまで」。ある劇団が広島についての演劇作品のリハーサルを行う様子と、そこに音響スタッフとして参加している青年が野外で音を採取する姿を追う遠藤幹大の「それがどこであっても」という4編の短編から成る、被爆都市である広島をテーマにしたアンソロジー作品。演劇カンパニー「マレビトの会」により、『長崎を上演する』(2013-16年)、『福島を上演する』(2016-18年)に続く長期プロジェクトの一環として制作された。

20231102035136-0fec217aa3cd876a74aff3dd6e71224f3c776282.jpg

『うってつけの日』They give me a day I will never forget(メイド・イン・ジャパン)

日本 / 2023 / 69分
監督:岩﨑敢志( IWASAKI Kanshi )

フリーランスで音響関係の仕事をしている琴は、かつて同棲していた昭一がフィリピンから一時帰国するのを空港で出迎える。二人の恋人としての関係は昭一が海外に渡ったことにより実質的に終わりを迎えていたが、昭一はかつて二人が同居し、今は琴が一人で住む団地の部屋にそのまま滞在することになる。とはいえそれで二人がよりを戻すということもなく、琴は自分の日常生活を淡々と続けるが...。映画美学校で万田邦敏監督から演出を学び、宮崎大祐監督や清原惟監督作品で助監督や録音を務めてきた岩﨑敢志の初長編監督作品。さりげないカメラワークと音響へのこだわりが秀逸な作品だが、何より素晴らしいのは琴を演じた主演の村上由規乃の佇まいで、特別なことが何一つ起きない物語の屋台骨を彼女の存在感が支えている。身の回りの世界を描いた小さな作品ではあるものの、琴の仕事の場面等を通じて日本社会の一側面が垣間見えてくるのも興味深い。