新人王最有力候補のボクサー・冴木輝彦(通称:テル)と生まれつき記憶力に長けているがコミュニケーションが苦手な友原勉(通称:ベン)。 二人は同じ団地で兄弟のように育った。 ベンはテルを真似てシャドーボクシングをしていられるだけで幸せだった。 ベンにとってテルは憧れで、絶対だった。だが、そんなテルが新人王決定戦で北澤に負けてしまう。しかし、敗北後も、テルは何事もなかったかのように、あっけらかんと振る舞う。ベンにも変わらず優しく接するが、テルの生活は少しずつ荒み、遊び呆ける日々。まるでボクシングなど初めから興味がなかったようにすら見えるその姿が、ベンを不安にさせた。憧れだったテルを、たった一度の敗北により失ってしまったのだ。
そんな喪失に耐えられないベンはある日、テルのグローブを持ち出して、「テルは負けない」「テルは負けない」と何度も呟きながら宿敵・北澤に復讐を誓い、歩き始める。