映画賞新人賞を席巻した『佐々木、イン、マイマイン』、続く『若き見知らぬ者たち』で一貫して現実に抗い、何かを掴もうとする若者の青春を見つめ、映画界に鮮烈な印象を残してきた内山拓也監督が、故郷の冬の新潟を舞台に、居場所とアイデンティティを模索する少年の物語を自伝的作品として世に放つ渾身の一作。
青年期の主人公・大地を演じるのは、北村匠海。母と自分のもとを離れた父への静かな怒り、女手一つで自分を育てた母に対し、愛と憎しみ、相反する感情に揺れる心の内を見事に体現。母・亜樹役には、宮沢りえ。無邪気さゆえに、大地に孤独を抱かせるような生活を送るものの、細部に息子への確かな慈愛が滲む母親を全身全霊で表現する。そして父・大原役には、永瀬正敏。暴君のような姿から一転、悲哀に満ちた余生を送る男を円熟味たっぷりに魅せる。また、少年期の大地として、榎本司、加藤庵次、穐本陽月、それぞれが無垢で力強いまなざしで、心の奥底に渦巻く寂しさや愛情、そして生きる力を表現し、物語全体を牽引していく。
日本海沿いの町に暮らす少年、大地は、幼少期に暴君のようだった父の影響から言葉を発しない。今は母の亜樹と暮らしているが、夜の仕事で生計を立てざるを得ない亜樹はほとんど家に帰らず、生活は苦しい。やがて亜樹と共に叔母の家に身を寄せるが、どこにも居場所はなく、ひとりで過ごしては内気になっていった。大地は父の行方を求めて生家を訪ねることを決意。これを境に、彼の運命は大きく揺らいでいく———。心のよるべなき貧困、誰にも見つからぬように生きる孤独の中のささやかな救い、母への複雑な感情。流されるままに生きているようで、歩みを止めない大地。そんな彼がかすかな光を手繰り寄せ、息をのむような大きな愛を知るまでの20年間が、少年の姿を追い続け、リアリズムに根ざした視点で綴られていく。