■開催期間
11/20(金)~11/29(日)
■料金
前売券 (11/6(金)19:00 〜 11/19(木)19:00まで):一般¥1,700 - ¥1,800/U-30割¥1,200 - ¥1,300
会期中券(11/20(金)AM 10:00〜):一般¥2,000/U-30割¥1,500
※前売券料金についてはプログラムによって金額が異なります。
※特別興行のため、TCGメンバーズカード、各種割引およびご招待券などはご利用頂けません。
※株主優待のご招待券、提示割引ともにご利用いただけません。
※東京都では18歳未満の方は23時を過ぎる上映回には保護者同伴であってもご入場頂けません。ご購入時に座席選択が可能です。なお、A列~C列は段差がございません。
※オンラインチケット予約のお客様は、予約完了メールのQRコード(本文URLをタップして表示)にてご入場ください。窓口や発券機でのチケット発券は必要ございません。
※プログラムや時刻、Q&Aの実施などは事情により予告なく変更・キャンセルとなる場合がございます。あらかじめご了承ください。
※1996年12月1日以降生まれの方を対象としたU-30割チケットがございます。当日会場にて年齢確認をさせていただく場合がありますので、年齢を証明できるものをお持ちください。
※障がい者手帳をお持ちの方はU-30割が適用されます。(付き添い1名様まで同料金でご購入いただけます。ご入場の際に、障がい者手帳または「ミライロID」をチケットと一緒にご提示ください。)
※チケットの払戻、交換、再発行はいたしません。また、当日にチケットをお持ちでない方は入場できません。
※一度完売した上映回であっても、状況により追加販売を行う可能性がございます。
※チケットの営利目的での転売・譲渡は禁止されています。不正購入が判明した場合は入場をお断りする場合があります。
※当映画祭のご来場による怪我、損失、損害、およびその他トラブルについて、主催者は一切の責任を負いません。貴重品は各自で管理をお願いいたします。万一、盗難や紛失が発生した場合も、主催者は責任を負いません。
■販売期間
・前売券販売
オンライン・窓口:11/6(金)19:00 〜 11/19(木)19:00まで
※連日、最終回上映開始と同時に窓口販売は終了となります。ご注意ください。
※一般上映作品と同じ窓口で販売を行うため、11/6(金)19:00の販売開始時刻よりも前に待機いただく行為はご遠慮ください。
※11/19(木)の東京フィルメックス上映作品の窓口販売は19:00をもって終了とさせていただきます。
※購入後の変更・キャンセルはいたしかねます。
★前売券販売終了(11/19(木)19:00)~会期中券販売開始(11/20(金)AM 10:00〜)の間は、ホームページ上にチケット購入画面が表示がされません。
会期中券販売開始のタイミングで再表示されます。(数分のタイムラグが発生する場合がございます。何卒ご了承ください。)
・会期中券販売
オンライン:11/20(金)AM 10:00〜 ~各作品上映開始時刻の20分前まで
※劇場窓口での販売も11/20(金)AM 10:00〜各作品上映開始時刻までです。
※窓口販売は連日 最終回上映開始と同時に終了となります。
※お立見販売はございません。また、キャンセルチケットもございませんので、何卒ご了承ください。(購入後の変更・キャンセルはいたしかねます)
崩壊寸前のソビエト社会を背景に、人間の極限的な疲弊を描いた作品。夫を失い激しい絶望から暴力的に振る舞う女を描くモノクロの第1部と、その映画の観客席で眠りこける、無気力症に冒された教師の日常を追うカラーの第2部で構成される。社会の閉塞感と個人の精神的崩壊を冷徹かつ実験的な演出で捉え、混沌とした時代そのものの狂気を体現したムラートワの代表作の1本。
夫を亡くした医師ナタリアは、病院を辞職し、周囲の人々を攻撃し始める。それを映画館で見ている教師ニコライは、いつでもどこでも眠りに落ちてしまう病にかかっている。ソヴィエト崩壊前夜の、肉体的・精神的な病を分有する人々を、断片的な構成でモザイクアートのように捉えた、黙示録的傑作。挑発的な表現や禁じられたスラングの使用によって、ソヴィエト映画史における最後の公開禁止作品となった。「存在論的アナーキズム」に貫かれた本作は西側世界でも物議を醸したが、ベルリンの壁崩壊以降初の第40回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した。
監督:キーラ・ムラートワ(Kira MURATOVA)/ソ連/1989/153分
■上映日■
11/20(金) 16:05 -
ヨシコ(影山祐子)は老いた父(流山児祥)と2人で暮らしている。主演するインディーズ映画で地方選挙に出馬する風変わりな夫(平沼誠士)の妻の役を演じることになり、撮影現場と日常を行き来する中で、映画と日常の境界が次第に曖昧になっていく。
今ここにある現実と地続きのディストピア社会を描き、一部で大きな反響を呼んだ『鈴木さん』(2022)。それに続く佐々木想監督の長編第3作がこの映画だ。社会風刺、政治、そしてコメディという多面的な要素を備えている点は前作と同様だが、それらをストレートに前に押し出した前作とは違い、本作は劇中でさらに別の映画が展開する「入れ子構造」を採用した。それぞれの要素はより断片化され、象徴的に扱われているのが特徴だ。最も強く前面に出ているのはデッドパン・コメディの要素。俳優陣の抑えた演技、それを引き出す演出力、そして見事な撮影と編集によって生み出されたもので、佐々木監督の確かな手腕を物語っている。『22世紀の猫』というタイトルが、民主主義に関する実在の書籍を指しているのか、あるいは架空の猫型ロボットを指しているのかは定かではないが、いずれにせよ、これが今ここにある現実を直視するためのタイトルであることに違いはないだろう。
監督:佐々木想(SASAKI Omoi)/日本/2026/84分
■上映日■
11/20(金) 19:05 -Q&Aあり
登壇:佐々木想(監督)、影山祐子(主演)
離婚を経て12年ぶりに若手監督のインディーズ作品で映画界に戻った女優(ソン・ソンミ)が、映画公開を前に3組の記者の取材を相次いで受ける。復帰の理由、離婚の真相、ペット、お酒…映画の内容とは無縁の似たような質問ばかり。だが、答えは少しずつ変わっていく。取材の後の演技教室で、彼女は今日の自分を再現しようとする。
加齢と創作活動というテーマに立ち返ったホン・サンス監督の長編第34作は、12年の空白期間を経てスクリーンに復帰したある中年女優の一日を捉えた、極めて抑制の効いた作品だ。劇中の大半を占めるのは、ほぼ同一アングルの固定カメラと長回しで撮影された3度のインタビュー風景。作品よりも私生活に興味を示す記者に対し、昼下がりのビールを酌み交わしながら軽やかにあしらう主人公の気品ある佇まいが印象的だ。これらの対話は一見すると画一的な雑談の反復だが、物語は彼女が夜間に通う演技教室のレッスンでそれらを脚本化し、再演しようと試みる終盤で驚くべき深みに達する。彼女は自身の語った言葉を反芻し、フィクションを通じることでしか到達できない自己の真実に触れていくのだ。本作は「反復」と「差異」というホン・サンス作品にはお馴染みの構造を持ちつつも、その精緻さと射程の広さにより、この映画作家の真骨頂とも言える静かな高揚感を私たち観客にもたらしてくれるだろう。
監督:ホン・サンス(HONG Sang-soo)/韓国/2026/84分
■上映日■
11/20(金) 21:20 -
野生の象が棲む森に囲まれたネパールの村。「キンナル」と呼ばれる「第三の性」の共同体を率いるピラティは、村の打楽器奏者の男との駆け落ちを密かに夢見る。ある夜、象対策の夜警に出たキンナルの娘が失踪する。警察に相手にされず、自ら捜索の先頭に立つことになったピラティは、自由への渇望と共同体への責任の間で引き裂かれる。
ネパールの辺境を舞台に、伝統的なトランスジェンダー・コミュニティ「キンナル(kinnar)」の絆と葛藤を描いたヒューマンドラマ。彼女たちは伝統儀式では祝福をもたらす存在とされる一方、日常生活では呪いをもたらす者として忌避されてきたのだという。ミン・バハドゥル・バム監督の『黒い雌鶏』(2015年/第16回東京フィルメックスで上映)やベルリンコンペ作『Shambhala』(2024)で共同脚本を手掛けたことでも知られるアビナーシュ・ビクラム・シャーは、初長編監督作となる本作で、彼女たちが抱える等身大の葛藤や感情を、ステレオタイプを排して真摯に紡ぎ出している。地に足のついたリアリズムで血縁を超えた強い結びつきを描きつつ、深い霧やそこに潜む象の群れといった神秘的なモチーフを加えた映像美は圧巻だ。古くからの伝統と現代的な視点を交差させながら、本作は「女性らしさ」の多様な姿や家族という関係性の多面的な輪郭を鮮やかに描き出し、ありのままの自分として豊かに生きるために私たちに何が必要なのかを深く問いかけている。カンヌ映画祭の「ある視点」部門でプレミア上映され、同部門で審査員賞を受賞。米国アカデミー賞国際長編映画賞部門のネパール代表作品。
監督:アビナーシュ・ビクラム・シャー(Abinash Bikram SHAH)/ネパール、ドイツ、ブラジル、フランス、ノルウェー/2026/103分
■上映日■
11/22(土) 21:15 -
1994年、シンガポール。家族から「阿Girl」と呼ばれる7歳の少女は、別居した両親の間を行き来しながら5歳の妹と暮らす。無口だが女性関係が派手な父、口うるさい祖母、頼りない母。大人の事情を横目に、ご禁制のガムの密売で小遣いを稼ぎ、妄想全開で初恋に心をときめかせるが、親たちの身勝手な選択が、少女の世界を大きく揺さぶる。
シンガポールの女性監督が度重なる資金難を乗り越え10年かけて完成させた長編第1作。両親の離婚で祖父母に預けられ苦学して育った自身の体験を下敷きに、普通とはちょっと違う環境に置かれた7歳の少女の成長を描く。なぜか自信満々でにぎやかな阿Girlと仲間たちの日常は、実写版ちびまる子ちゃんの趣。子どもの目の高さでとらえた大人たちはどこか遠く曖昧な存在で、その都合に振り回される少女の葛藤がじわりと胸に迫って来る。主人公・阿Girlを好演したオン・シュエンジン(王宣静)は、1年がかりのキャスティングで発掘。本作で香港映画祭で史上最年少の最優秀女優賞を受賞した。祖母の複雑な対日感情など、随所にちりばめられた「日本」にまつわる要素も興味深い。ロッテルダム映画祭Bright Future部門でワールドプレミアされユース審査員賞を受賞。金馬奨では新人監督賞、脚色賞、新人俳優賞の3部門にノミネートされた。
監督:アン・ゲックゲック・プリシラ 洪玉桔(ANG Geck Geck Priscilla)/シンガポール/2026/99分
■上映日■
11/23(日) 21:15 -
テヘランの医師が、負傷した抗議デモ参加者を治療したために逮捕される。医師免許を剥奪されたうえ診療所も閉鎖に追い込まれ、失意の底に突き落とされた医師は、自らの命を絶とうと決意する。「最後の一日」に母や妹弟らを訪ねて回り、自分の旅立ちに備えさせようとするが、思いもかけない出来事が彼の決意を揺るがす。
深刻な社会情勢と不条理に直面する現代のテヘランを舞台に、深い絶望から微かな希望を見出す人間の姿を静謐に描き出した端正なドラマ。抗議者を治療したことで医師免許を剥奪された主人公が自殺する決意を固め、「最後の1日」に年老いた母親や兄弟たちを訪ね歩く過程を追う。無駄のない脚本と慎み深い演出、そして主演のミシャク・ザラをはじめとする俳優たちの力みのない演技が無理なく調和し、イラン社会の緊迫感とそこに暮らす人々の人間味溢れる息遣いが多層的に捉えられている。絶望の深淵にありながらもふとした瞬間に滲み出るささやかな可笑しさや、家族と過ごす穏やかな時間が重なることで、タイトルが示唆する通り、暗闇のなかに一筋の微かな光が立ち現れる様は感動的だ。今年1月の反政府デモ弾圧の直後にテヘランで撮影開始、2月にイスラエルと米国が戦争を開始し監督の自宅付近にも着弾したため、イスタンブールに移動して屋内シーンを撮影した。ヴェネツィア映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映された。
監督:アリ・アスガリ(Ali ASGARI)/イラン、スイス、イタリア、カナダ、トルコ/2026/87分
■上映日■
11/24(火) 17:00 -
地方都市で行政官を務める女性は、家政婦として雇った少女と奇妙な信頼関係を築く。しかし二人は知らぬ間に、旅を続けるひとりの男を同じように愛していた。真面目な都市生活者と無垢な少女。過去の甘い記憶と切ない回想が重なり合う中、男の不在が二人を結びつけ、同時にそれぞれの孤独を深めていく。
原作『草原の家』を女性の物語として翻案した、ムラートワの初の単独名義での長編。ウェイトレスとして働くナディア、市役所の上下水道担当の職員ヴァレンティーナは、二人ともさすらいの地質学者マクシムと恋に落ちており、二人は勘違いから共同生活を始めることになる。一人の男性を起点に、女性たちのそれぞれの生活が、複雑なフラッシュバックで交差する、瑞々しく先鋭的な「地方のメロドラマ」第一作。ヴァレンティーナ役の女優が見つからなかったため、ムラートワ自身が演じている。またマクシム役の歌手ヴィソツキーは、本作によって60年代のソヴィエトを代表する歌手として名を馳せることとなった。
監督:キーラ・ムラートワ(Kira MURATOVA)/ソ連/1967/92分
■上映日■
11/24(金) 18:55 -Q&Aあり
登壇:ウジェニー・ズヴォンキーヌ(審査員)
脳の検査結果を待つ女性ヴァイオリニストZiは、未来の自分の幻影に悩まされる。香港の街をさまよう彼女は、金髪のウィッグを被った米国人女性エルと出会う。エルの元婚約者ミンも合流し、夜の街へ繰り出した3人は、それぞれの過去と喪失を語り合う。監督が仲間6人と自主製作し、坂本龍一に捧げた親密な再生の映像詩。
『コロンバス』(2017)や『アフター・ヤン』(2021)といった作品において、記憶と時間の不可逆性を深く静かに思索してきたコゴナダ。本作はそんな彼が、メジャースタジオ製作の『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(2025)を経て、脚本も予算もない状態のまま、最小限のクルーやキャストと共に香港で撮影を敢行した作品だ。主人公は、未来の自分の幻影に苛まれている若い女性ヴァイオリニストのZi。彼女が路上で出会ったアメリカ人女性と心を通わせていく一昼夜が描かれ、静謐なカットの積み重ねによって、彼女らの抱える孤独や他者との繋がりへの渇望が徐々に浮かび上がっていく。即興的なカメラワークと色彩設計によって捉えられた香港の路地の風景は、単なる背景であることを超えて物語の重要な登場人物のように機能しており、坂本龍一のオリジナル曲やリミックス曲を使用したサウンドトラックも絶妙な効果を上げている。慎重な引き算によって作られた、模索的で未完成な実験作ともいえる本作だが、観る者の記憶や感覚に静かに語りかけ、鑑賞後も長い余韻を残すだろう。
監督:コゴナダ(Kogonada)/アメリカ、香港/2025/100分
■上映日■
11/26(木) 21:40 -
タイからの不法移民の青年オームは台湾の山岳地帯の田舎町で老人や障害者たちの介護の仕事をしている。東南アジア各地からの不法移民たちを闇で働かせているボスの下、移民労働者たちの仲介役でもある彼は、ボスと移民たちとの間で板挟みになることも多い。そしてある日、彼が介護をしている老女から、重度の障害を持つ彼女の息子について、ある相談を持ち掛けられる……。現代の奴隷制度ともいえる環境の中で暮らす移民労働者たちの絶望的に悲惨な状況や、彼らの直接のボスよりもさらに上の階層の闇社会の権力によって構築された搾取のシステムの在り方が、説明を極力排した厳密な筆致で描かれていく。フレーム内外で見事に制御された絵画的な構図や、長い沈黙を恐れない編集のリズムの調整も秀逸で、長編監督1作目にして見事な完成度に達している。ホウ・シャオシェンとリャオ・チンソン(ホウ作品の長年の編集者)が製作者として参加。カンヌ映画祭の監督週間で初上映され、初長編作品を対象とした賞、カメラドールのスペシャル・メンションを授与された。
監督:プッティポン・アルンペン(Phuttiphong AROONPHENG)/タイ、シンガポール、フランス、オランダ/2026/118分
■上映日■
11/24(火) 21:20 -
赤い法衣をまとった裸足の行者(リー・カンション)がスペイン・バスク地方のサン・セバスティアンを歩く。エドゥアルド・チリーダの彫刻「風の櫛」に寄せる大波、市街地の路地、ラ・コンチャ海岸、廃坑、喧噪のクラブ、古老の農場…。光と影、静と動が移ろう街をとらえる。ヴェネツィア国際映画祭 Venice Open部門でワールドプレミア。
「行者」シリーズは、唐代の僧・玄奘三蔵の姿と重ねられた行者(リー・カンション)が、様々な土地を極端に遅い速度で歩く様を追った連作映像。2012年に携帯電話会社の広告用に製作して以来、様々な映画祭や美術館などと協業しながら撮り継いできた。物語もセリフもなく、カメラは基本的に固定。音や光の変化だけが画面を動かす。 第11作の『微塵』はバスク地方特有の家並みや豊かな自然を多面的にとらえ、変わるものと変わらざるものを対比する。題名は「塵とは塵に非ず、ゆえに塵という」という金剛経の一節が由来。今年のヴェネチア国際映画祭 Venice Open部門でワールドプレミアされた。 『夜行』はチェコ最古の工業の町イフラヴァを舞台にした短編。イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭の会期中にプラハ芸術アカデミーの学生たちとともに10日間で撮った。夢見るような街を慈しむとともに、映画へのオマージュにもなっている。11月22日発表の第63回金馬奨の最優秀短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。
監督:ツァイ・ミンリャン 蔡明亮(TSAI Ming-liang)/台湾、スペイン/2026/80分
■上映日■
11/25(水) 16:25 -
『夜行』と併映いたします。(二本立て)
秋のチェコ。東部の小さな町イフラヴァは、日暮れとともにひと気が消える。霧が漂う落ち葉の石畳を行者(リー・カンション)がゆっくりと歩く。その姿が、街の映画館のスクリーンに映し出される。無言の歩行を前に眠る客、途中で席を離れる客…。入れ子構造で新たな世界へ誘うシリーズ最新作。プラハ芸術アカデミーの学生たちがスタッフを務めた。金馬奨の最優秀短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。
「行者」シリーズは、唐代の僧・玄奘三蔵の姿と重ねられた行者(リー・カンション)が、様々な土地を極端に遅い速度で歩く様を追った連作映像。2012年に携帯電話会社の広告用に製作して以来、様々な映画祭や美術館などと協業しながら撮り継いできた。物語もセリフもなく、カメラは基本的に固定。音や光の変化だけが画面を動かす。 第11作の『微塵』はバスク地方特有の家並みや豊かな自然を多面的にとらえ、変わるものと変わらざるものを対比する。題名は「塵とは塵に非ず、ゆえに塵という」という金剛経の一節が由来。今年のヴェネチア国際映画祭 Venice Open部門でワールドプレミアされた。 『夜行』はチェコ最古の工業の町イフラヴァを舞台にした短編。イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭の会期中にプラハ芸術アカデミーの学生たちとともに10日間で撮った。夢見るような街を慈しむとともに、映画へのオマージュにもなっている。11月22日発表の第63回金馬奨の最優秀短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。
監督:ツァイ・ミンリャン 蔡明亮(TSAI Ming-liang)/台湾、チェコ/2025/38分
■上映日■
11/25(水) 16:25 -
『微塵』と併映いたします。(二本立て)
50歳で脱サラし埼玉県深谷市に映画館「深谷シネマ」を創設した竹石研二。2024年、76歳になった彼は館の運営の若者への引き継ぎを決意する。資金難のなか、マイペースに奔走する愛すべき館長の日常。映画への熱い想いとユーモアあふれる引き継ぎ劇を、深谷市出身の映画監督・入江悠がカメラで追った。
長年「深谷シネマの顔」として走り続け、2024年に館長としての実質的な運営業務を次世代に引き継ぎ、現在は同館の名誉館長を務めている竹石研二氏の深谷シネマ館長としての最後の日々を追ったドキュメンタリー作品。竹石氏は、約30年間映画館がなくなっていた埼玉県深谷市に「もう一度映画館をつくりたい」と一念発起し、50歳のときに勤務先を退職し、市民有志らとともにこの映画館を創った。監督の入江悠にとっては初のドキュメンタリー映画となる本作。ナレーションや字幕による説明を排した極めて観察的な作品である一方で、観察対象への愛着や距離の近さも感じる作品であり、それがこの作品の個性にも繋がっている。映画館運営における竹石氏の日常的な仕事――映写のチェック、定例のスタッフ・理事会議、監督や俳優を招いたトークや舞台挨拶、そしてお客さんへの対応や交流に至るまで――が温かく丁寧に映し出されており、地方の「ミニシアター」の一つの在り様がありのままに捉えられている。
監督:入江悠(IRIE Yu)/日本/2026/108分
■上映日■
11/25(水) 18:50 -Q&Aあり
登壇:入江悠(監督)
旧正月で北京から故郷ハルビンの実家に帰省することになったレイ。結婚を迫る母に同性の恋人ベイの存在を隠すため、彼女は「恋人」役の青年を雇って連れて帰る。計画は順調に進んだかに思えたが、演技と現実の境界が曖昧になり、レイは自らのアイデンティティが揺らぐのを感じる。そこに、ベイが突然現れる。
中国の大学を中退し、創作の場を求めて米国に渡った女性監督が同名短編を経て完成させたデビュー作。監督自身とパートナー(本作の製作者)の体験を元に、同性愛者だと親に明かせない主人公の苦い帰郷の日々を追う。親を思って偽の恋人を仕立てる設定はアン・リーの『ウェディング・バンケット』(1993)にも通じる定番だが、本作の白眉はその先。自己増殖する嘘、沈黙の下に隠れた真実を、きわめて抑制されたタッチで丹念に描く。「よき娘」と「本当の自分」の間で苦しむ主人公と、家族への献身ゆえに娘を追い詰めてしまう母親の確執はとりわけスリリング。監督の故郷ハルビンの凍てつく風景も深い感興をもたらす。中国ではLGBTQ∔映画は事実上の禁止状態にあるが、製作陣は中国系企業の資金を一切受けずにこの企画に挑んだ。娘を遠巻きに見守る父親役は、製作者の実父が演じている。ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア。金馬奨では新人監督賞、脚色賞、主演・助演女優賞の4部門にノミネートされた。
監督:ミシェル・ジョウ 周彤(Michelle Zhou)/香港、アメリカ/2026/110分 ■上映日■ 11/25(水) 21:30 -
両親と娘、息子の4人家族が、迫りくる危機を逃れて、海と森の間の一軒家にたどり着く。幼い息子は事故で寝たきりになり、家族は聞く者の記憶を密かに消し去る物語を繰り返し語って聞かせる。一方、悪夢に悩まされる娘は、失われた幼少期の記憶がこの家や夢に出てくる緑のドレスの少女と関係あるのではないかと気づく。
海と森の間に位置する人里離れた一軒家へ、追われるように避難してきた4人家族。そこは守られているような安心感と、どこか不穏な空気が同居する場所で、彼らはやがて奇妙な「狭間」のような状態に囚われていく…。本作はコロンビア大学で学び、短編作品で国際的な評価を得てきたエイミー・ソン監督の長編デビュー作。ヴェネツィア・ビエンナーレによる映画製作支援プログラム「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」の助成によって製作され、エグゼクティブ・プロデューサーとして、タイの異才アノーチャ・スウィーチャーゴーンポンが参加している。『刻舟求剣』や『精衛填海』といった中国の故事を援用しつつ、家族内の沈黙と記憶の忘却のプロセスが象徴的に描かれていく。家という閉ざされた空間と森という舞台の対比も見事で、細やかに設計された音響と画面構成が静謐な緊張感を醸し出し、家庭という最小単位の共同体が持つ政治的なメタファーを鮮烈に浮かび上がらせる。ヴェネツィア映画祭でプレミア上映後、釜山映画祭でも上映された。
監督:エイミー・ソン 宋一楠(Amie SONG)/アメリカ、香港、タイ/2026/83分
■上映日■
11/26(木) 17:20 -
爆撃が続くガザに入り、命と向き合う3人の米国人医師に密着したドキュメンタリー。パレスチナ系、ユダヤ系、ゾロアスター教徒という異なる背景を持つ彼らは、様々な障害に直面しながら治療に奔走し、メディアや議会を通じて現地の惨状を訴え続ける。戦禍の医療現場と政治的現実の埋めがたい距離を見つめる。
映像素材を確認していた医師が、爆撃で殺された子供の写真に目を止める。「犠牲者の尊厳を考えてモザイク処理を…」という監督に、医師は迫る。「なぜ?見せるべきだ」――こんなやり取りで本作は始まる。ガザ地区の病院で2025年に救命医療に従事したユダヤ系の整形外科医、パレスチナ系の救急救命医、ゾロアスター教徒の外傷外科医に密着。戦禍の実情を生々しく伝え、即時停戦を訴える彼らの姿と、それを取り巻く米国の政治的現実を対比させる。米国でビデオジャーナリストの経験を積んだ女性監督が私財を投じて立ち上げた企画。封鎖状態のガザの模様は現地のクルーが撮影し、監督の元に毎日送信した。製作費集めは難航し、監督の故郷マレーシアで資金を募り完成にこぎつけたという。サンダンス映画祭米国ドキュメンタリーコンペティション部門でワールドプレミアされ、カナダのHot Docsで観客賞を受賞。『小学校~それは小さな社会~』(2024)の山崎エマ監督が編集に参加した。
監督:ポー・シー・テン(Poh Si Teng)/アメリカ、パレスチナ、マレーシア、カタール、デンマーク/2026/93分
■上映日■
11/26(木) 19:10 -Q&Aあり
登壇:ポー・シー・テン(監督)、山崎エマ(編集者)
韓国南部の小さな島。ここで生まれ育った17歳の少女ジンは、近頃なんだか落ち着かない。幼なじみの少年ドゥジェが祖母の葬儀で久々に戻ってきたのだ。空き家になった祖母宅にひとり残った彼を口実を作っては訪ねるうちに、ジンは嫉妬心や独占欲、さらにもっと根源的な衝動が自分の中から湧き上がるのに気づく。
デビュー作『夏時間』の繊細な人物描写で注目を浴びたユン・ダンビ監督が7年ぶりに発表した第2作。静かな漁村に生まれ育った少女のひと夏の成長を、島での生活を通して丁寧に積み重ねて描く。青春映画の王道を行く初恋物語だが、ドラマは恋の行方より、それを知った少女の変化に深く焦点を合わせる。見慣れたはずの風景や人々の顔が次第に違う意味を持ち、汗ばむ肌の内側から衝動的な何かが沸き上がる。幼い欲望を子細に見つめながらも、男性目線の煽情性と一線を画し、少女を「見られる客体」ではなく「欲望する主体」としてとらえる演出が出色。オーディションで選ばれたシム・スビンの存在感にも引き込まれる。トロント国際映画祭プラットフォーム部門でワールドプレミアし、釜山国際映画祭パノラマ部門でも上映。サンセバスチャン国際映画祭ニュー・ディレクターズ部門でSpecial mention、またAsia Pacific Screen Awardsでは、最優秀新人俳優賞(主演シム・スビン受賞)と国内外で高い評価を得ている。
監督:ユン・ダンビ(YOON Dan-bi)/韓国/2026/115分
■上映日■
11/27(金)21:15 -
南ベトナムから香港に密航した元兵士ウー(チョウ・ユンファ)は、難民キャンプを脱走し、偽造旅券で渡米を目指す。その途上で出会った同じ境遇の女性サム・チン(チェリー・チャン)がマニラで人身売買組織に拘束される。彼女を救うため、ウーは裏社会に身を投じる。香港ニューウェーブの傑作サスペンスを4K修復版で上映。
来年で80歳になるアン・ホイ監督の初期の代表作。テレビドラマ『來客』(1978)から映画『Boat People』(1982)に至る「ベトナム三部作」の第2作にあたる。愛する人を救うため殺し屋となる元兵士の葛藤を当時25歳のチョウ・ユンファが好演。アクション指導をチン・シウトン、助監督をスタンリー・クワンが務める。本作の製作にあたり、監督と脚本のアルフレッド・チョンは香港の難民キャンプやマニラの中華街を訪ね、難民たちの生活空間に身を置いて越境者の体験を聴き取った。ギャング映画の骨法を備えた活劇に、主人公の内面を伝える手紙の朗読を重ねた多層的な語りは、ベトナム難民の心情を伝えるとともに、混乱を逃れ英国の植民地に流れ着いた香港人の歴史も映し出す。第1回香港電影金像獎の最優秀脚本賞受賞作。ヴェネツィア映画祭でワールドプレミアされた香港の美術館「M+」による4K修復版を上映する。
監督:アン・ホイ 許鞍華(Ann HUI)/香港/1981/92分
■上映日■
11/28(土)21:15 -
※日本語字幕のみ Japanese subtitles only
「おばあさんは死が近い」。不吉な占いを聞かされた63歳の息子は、家族で長寿祈願の寺巡りに繰り出す。「9」という縁起のいい数字にちなみ、三世代9人で1日に9カ所の寺を巡る計画だったが、肝心の母は車から降りたがらず、家族の間に不協和音も広がる。暗雲立ち込める日帰り旅行で、一家は果たして功徳を積めるのか。
アピチャッポン・ウィーラセタクン作品の助監督を20年以上務めた映像作家の初の劇映画。前作のドキュメンタリー『Railway Sleepers』(2016)では列車内の光景を通してタイの近代化の歩みを描いたが、今回は車で徳積みの寺院巡りをする家族に密着した。師匠のスローシネマの美学を継承しつつ、独自の社会批評性やユーモアが随所に光る。パートタイムの僧侶、てきぱきと仕分けされた寄進の品が並ぶ倉庫。9階建ての塔が自慢の寺では、僧侶が高齢の祖母にエレベーターを勧める。「天国へのファストトラックです」。フィクションでありながら現代の寺院でいかにも起こりそうなエピソードの数々が、信仰の制度化や商業化、世代間の宗教意識の違いを、ときにコミカルに、ときに不条理な響きを伴って浮かび上がらせる。カンヌ国際映画祭監督週間でワールドプレミアされ、上海映画祭で監督賞と最優秀男優賞をW受賞。米アカデミー賞国際長編映画賞のタイ代表に選ばれた。
監督:ソムポット・チットケーソーンポン(Sompot CHIDGASRONPONGSE)/タイ、シンガポール、フランス、ノルウェー、中国、香港、インドネシア、カタール/2026/140分
■上映日■
11/29(日)21:00 -