⾼学歴でもなく、資⾦も経験もなかった⻘年が、誰もが夢見た"理想郷"を現実へと導いた。
夢想家か、革新者か――これは、地方の片隅から世界を変えた男の叙事詩。
農村で育ったブルネロ・クチネリは、父が工場で尊厳を踏みにじられるような扱いを受ける姿を見た経験から「人間の尊厳ある働き方」を求め、1978年に小さなニット工房を立ち上げる。ニュートラルな色合いが主流だったカシミヤに鮮やかな色彩を取り入れるという革新的なアプローチを導入し、〈ブルネロ クチネリ〉は世界有数のラグジュアリーブランドとして知られる存在へと成長していく。成功ののち、彼が選んだのは拡大ではなく、人間の尊厳と美を祝福することだった。その結実となるのが中世の村ソロメオの再生である。荒れ果てていた建物を丁寧に修復し、劇場や図書館建設をはじめ、葡萄畑やオリーブ畑を含めた公園を造園。文化とクラフツマンシップ、自然、そして働く人々の営みが調和する村へと育て上げていった。こうした取り組みにより、ソロメオは 文化・環境・経済再生のモデルとして国際的にも注目されるようになる。
「夢は、勇気をもって育てるとき、人の運命を導く真の力となる」
アカデミー賞®受賞監督ジュゼッペ・トルナトーレは、証言・アーカイブ映像・再現ドラマを重ね合わせ、この人生を静謐な叙事詩として描く。職人の姿、カシミヤの質感、染色の深まり──そのすべてが"倫理の美学"と"人間の尊厳"を照らし出す。オプラ・ウィンフリー、パトリック・デンプシー、リード・ホフマンら多彩な証言者が登場。現代社会において、クチネリは"人間主義的経営"と"森羅万象との調和"を掲げ、企業が社会に果たし得る役割についての新たな視点を提示する。本作は、単なるファッションドキュメンタリーにとどまらず、より人間性を大切にする働き方や生き方について観客に思索を促す作品となっている。ひとりの人生の軌跡が、村を、そして世界の価値観を静かに照らしていく。人はどう働き、どう生きるべきか──その問いが観客の胸にそっと立ち上がる。