1 / 16 [金] 公開
映画には観る者に勇気や希望を与える力があるが、それとはまったく逆のネガティブな吸引力をみなぎらせ、おぞましい結末へと突き進む異端的な作品もある。俗に"胸糞映画"とも呼ばれるそれらの映画は近年、絶望的なバッドエンディングに打ちのめされた観客が、SNSにその衝撃体験を投稿し、密かな盛り上がりを見せるという現象が起こっている。ベルギーのフィーラ・バーテンス監督が放った長編デビュー作『MELT メルト』は、まさしくその系譜に連なるであろう新たなトラウマ映画である。
ブリュッセルでカメラマン助手の仕事をしているエヴァは、恋人も親しい友人もなく、両親とは長らく絶縁している孤独な女性。そんなエヴァのもとに一通のメッセージが届く。エヴァの少女時代に不慮の死を遂げた少年ヤンの追悼イベントが催されるというのだ。そのメッセージによって13歳の時に負ったトラウマを呼び覚まされたエヴァは、謎めいた大きな氷の塊を車に積み、故郷の田舎の村へと向かう。それは自らを苦しめてきた過去と対峙し、すべてを終わらせるための復讐計画の始まりだった……。