10 / 30 [金] 公開
デス・メタル。
人間の声をかなぐり捨てた「デス・ボイス」と呼ばれるボーカル・スタイルとスピード・暴虐性に振り切った音楽性で、ヘヴィ・メタルの中でも最も異端として進化してきたそのジャンルを耳にしたことはあっても、その起源を知っている人はどれくらいいるだろうか。
DEATHはその名の通りバンド名がそのままジャンル名となった稀有なバンドだ。
『デス・バイ・メタル~デス・メタルを作った男~』は、1983年フロリダで結成された伝説のバンド=DEATHを率いた男、チャック・シュルディナーの生涯を描いたドキュメンタリー映画。
ヘヴィ・メタルの内包する激しさを極限まで煮詰めたようなパブリック・イメージとは裏腹に、彼は驚くほど繊細で、音楽に対して誠実だった。
理想の音を追求するためなら、たとえ長年の仲間であっても容赦なくメンバー・チェンジを繰り返す。徐々にバンドは彼のソロ・プロジェクトの様相を呈していき、その独裁者とも言える完璧主義者ぶりは時に非情とも呼ばれた。
が、それこそが妥協なき音楽的進化を可能にした原動力でもあった。
本作は、テープ・トレードを通じて音楽を分かち合う青春時代に始まり、バンド結成、幾多のメンバー交代、そして音楽性の絶えざる進化を経て、やがて彼の身体を蝕む病魔との闘いへとたどり着く。
34歳という若さで世を去るその最期まで、彼は音楽を作ることをやめなかった。
終盤、病床で電話越しに新曲を聴き、遠く離れた仲間たちと涙するエピソードは彼の人間性を深く掘り下げるものだ。
暴力的なジャンル・イメージからは想像もできない、ひとりの人間の静かな強さ。
自分の信じる音楽を貫き、変化を恐れず、時に孤独になりながらも前進し続けた男。
本作は、そんな彼の生き様を、共に音楽を作ってきた仲間たちの証言を通して丁寧に映し出すドキュメンタリーである。